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転生失敗勇者  作者: snuiw
ルクセンティ動乱
1/5

顔と身長だけで判断はご勘弁

不愉快な音がする。


動物的な音だ。


聞いているだけで吐き気がする。


寝ても覚めてもこの音だけが響いている。


頭ががんがんする。


意識が流れていく。


自分が自分でない、そんな錯覚がずっと続く、そう思っていた。


ふと、視界に映る、金色の物体。


さらさらしているそれはよく見てみると、髪であることがわかる。


人だ、人がいると思って上を見る。


そこには。






「ッ!」


パチリと目が開く。


また、この夢だ。


俺がこの世界にいる限り、永遠に解けることのない呪いのような、夢だ。


そんなことを考えていると、心地好い夜風が頰を撫でた。


此処は人目のつかない森の中だ。


ローブを脱ぎ、汗ばんだ身体に風を当てる。


暫く夜風に当たり、星空を見上げる。


自分がこれから何を成すべきなのか、考えながら。






森の中で思考を巡らせた後、俺は夜のルクセンティ王国の城下町に足を運んでいた。


この王国はこの大陸で最も栄えている国で人口も技術も他の農村とは違い抜きん出ている。


この王国に足を運ぶのは初めてだが、噂だけは予々聞いている。


「此処が宿屋か」


俺は宿屋の扉を開いた。


正面には程よく太った中年の人間が座っていた。


中年の人間が怪訝な顔をしている。


今は日が落ちてだいぶ経っている、昼寝のつもりで寝たのだがかなりぐっすり寝てしまっていたみたいだ。


「夜遅くにすまない、泊めてもらえないだろうか」


俺は長らく人と話していなかったから、どう話せばいいのか一瞬わからなくなったがすんでで思い出すことができた。


「あー、はいはい、一晩100ルクスね」


「わかった」


取り敢えず硬貨を出す。


「10泊するのかい?」


成る程、これが1000ルクスかと納得しながら、

「予定は決まっていない、それは受け取っておいてくれ。泊まる日数がオーバーした時はその都度渡す」


「はいわかりました、ではこちらに」


金払いのいい客に中年の男は気を良くしたのか、ご機嫌で俺を案内する。


「ところでお客さん、その仮面はなんでしょうか?」


「…これか?、これはカラスの仮面だ」


中年の男はハッとした、俺の触れられたくない所に気付いたみたいだ。


「いえ、なんでもありません」

助かった、無闇矢鱈と詮索されたら困る。


「この部屋です、朝ごはんは…」


「すまないが部屋まで運んできてくれるか?」


「分かりました」


中年の男が扉を閉めて降りていく音を聞いて安堵する。


拠点は確保した、後は。






「晩御飯です」


その日1日をこもって過ごしていた俺をきっと不審に思っているであろう中年の男はご飯を運んできた後に俺は行動を起こし始めた。


ご飯をかき込み、窓からこっそりと出る。


城壁まで、ひた走る。


息は乱れない、これは日頃の修練の賜物だろう。

そして、よじ昇る。


この身体は壁に身を寄せやすく、この指は小さな穴にもよく入る。


そうして入った城の中で俺は目的の物を、探そうとしたのだが…


「キャー!!!」


何だか厄介事の予感だ。






俺は悲鳴の聞かれた方向に向かってみる。


そこで奇妙さを覚える。


「女の声がしたのに兵士が動かないな…」


何にせよ、何かあったのは確かだろう。


音の発生源に近づくと、身なりの良い若い女が身なりの良い男に羽交い締めされている。


「ンーンンーー!!」


女は必死に抵抗しているが男の力が相当強いかしら、全然解ける様子はない。


男のニヤニヤ顔が鼻に付く。


「やれやれ」


俺は天井に張り付いて、二人にそろりと近づく。


「おらよっと」


そして、俺は男の首を刎ねた。


血は、出なかった?


「あん?何だお前」


首が飛んで行った方向から声がする。


「俺がせっかくお楽しみしてたのによぉ!」


女を羽交い締めしてた身体がこちらに手を出す。


「うおっ!」


上級魔族か、と俺は攻撃をかわそうとしたが、カラン、と仮面が落ちてしまった。


その瞬間、女の顔は凍りつき、男は奇妙な顔をした後、笑い出した。


「なんだ、貴様は、その顔は、その形は、それじゃあまるで


ゴブリンじゃないか!」


その言葉は俺には禁句だ。


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