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四つ目の願い

作者: 氷室夕己

 若い男がいた。趣味もなく無難な仕事を選びこれもまた普通に生活をしていた。今日は自分の無難な仕事が終わった。いつもだったら普通の家に戻ってテキトーな飯を食べるところだ。だけどその飯を買うためにスーパーによるところだ。その通りすがら、道端に何やら金ぴかなものが見えた。時刻は夕方だったので男も始めは夕日のオレンジに照らされたガラス片かと思ったがどうも違う、これは……金ピカのランプだ。いかにも擦れば魔人が出てきそうなランプだ。ランプの魔人の話は当然知っている男だったがもちろんそんな話を信じているわけでもない、だけどこんなランプを見てしまったら誰だって擦りたくなる。だってその話を知っているのだから……

 まさかなとランプを擦る、そんなことあるわけないよなと思っていたがそんなことはあった。ランプの輝きは擦るごとに増す一方で更に更に煙まで出てくる。これはもしや、もしや?そう、もしかしなくても本物の魔人のランプだ!

「あら?今日はやけにお客さんが多いことだ」

開口一番がこれだった。魔人が出てくることだけでも驚きなのだがその魔人は今日はお客さんが多いというのだ。

「ま、魔人で間違いないのですか?」

思わず敬語で聞いてしまった。

「まぁこの時代の人たちはそう呼ぶみたいだね」

本人はその気が無いみたいだが自分を含めて魔人と呼ぶなら魔人なのだろう自称より他称の方が信頼できる。何よりランプをこすったら出てきたのだから魔人であることに間違いはないだろう

「まさか願い事を叶えてくれるのですか?」

「確かに願い事を三つ叶えてあげられるけど……しっかしこの時代の人はとにかく願い事にうるさいなぁ」

当然だ。ランプと言ったら魔人、魔人と言ったら願い事だ。ランプを擦って魔人が出てきたら誰だってお願いをする。願い事は三つまで何てお決まりもお決まり、さてさて何をお願いしようかなと頭の中はそれはもう欲望でいっぱいだった。

「魔神さん魔神さん、まずはお金をお願いします。だだっ広いだけの倉庫に収まりきれないほどの札山をお願いします」

真っ先に思いついたのはお金だった。この世で最も重要と言えるお金を願い事にした。

「いいでしょう、あなたの家の横にだだっ広いだけの倉庫と収まりきれないほどの札山を用意しましょう……ソイっと」

なんとあっさりな、家は少し離れた場所にあるのでここからでは倉庫と札山が本当に出来たかどうかわからない……だから次の願いはすぐに実感できるようなものにしたかった。

「そうだな……では健康的で丈夫な体が欲しい」

この願い事では少し実感しにくいかもしれない、だけど願い事の数には限りがあるのでそう簡単に決めるわけにも行かなかった。だから願い事は体、これなら多少なりは実感があるだろう

「いいでしょう、ソイっと」

どこかで体が軽くなったきがする。体は軽くなったはずなのに筋肉は固くなり正しく丈夫な体だ。これは間違いなく願い事が叶った。

「信じられない、これはいよいよ本物だ」

さてさて次の願い事はどうしようか?願いは最後の一つなのでじっくり考えなければならないのだが……

「魔神さん、願い事はやっぱり三つまでですよね?増やしたりはできませんよね?」

ダメもとで聞いてみたのだが魔人の答えは意外なものだった。

「ご希望があるならいいですよ。別に四つ目だろうと五つ目だろうと」

なんということだ。この魔人は物分りがいいのかそれとも単純にルールに縛られないタイプの魔人なのか?どちらにせよいくらでも願い事を叶えてくれるならいくらだって願い事はあるのだ。いくらでも叶えてもらおうではないか……

「それではそれでは三つ目の願いは女だ、女が欲しい!四つ目は権力だな、この国を収めるほどの権力を……」

男が四つ目の願いを魔人に伝えた途端に男の目の前は真っ暗になった。




 男は倒れる。男が倒れたその場所には死体すら残らずただランプが金属の音を寂しく響かせながら空中落下しただけだった。魔人は思う。

「そうだ、重要なことを言い忘れていた。願いを叶えるにはその人の存在の力が必要だって事を……」

何でも叶うなんて虫の良い話なんてない、願いを叶えるならそれ相応の代償が必要だ。魔人の言う代償はそのものの存在の力……どうやら願いを四つ以上叶えると人間は存在できないようだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] キチンと落ちがあって、起承転結がはっきりとしている作品ですね。この短い文章の中でもしっかりとまとめられていると思います。
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