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第十一話 神様のイタズラ

10~12話を同時に投稿したので10話をご覧になっていない方はぜひご覧ください。

 俺――元宮和誠にとって「主人公」という存在は、ヒロインとは何もしなくても引き寄せ合ってしまう、そんな都合のいい運命を背負うものだと思っていた。

 決して、クラスで唯一自分を嫌っている“超絶美少女”と縁を結ばれる運命なんかじゃない。


「……神よ」


 隣の席でペンを走らせている文月幸來を横目に、俺は小さく呟いた。


(たまたま同じ塾だった――それだけなら許せた。だがなんだよ、10クラスある中で同じクラス? 40席ある中で席が隣って……)


(神よ……マジ許すまじ!)


 沈黙に耐えきれなくなり、俺はそっと声をかける。


「文月さんも、ここの夏期講習受けたんだ」


「はい。一ヵ月学校を休んでしまっていたので……皆さんに追いつかないとと思いまして」


「そ、そうなんだ」


「……」


(いやいや、触れにくい! “その休んでたの俺のせい?”なんて聞けるわけねーだろ!)


 そんな俺の動揺を打ち消すように、講師が教室へ入ってきた。そこから三時間――長い講義がようやく終わる。


「はい、今日はここまで。明後日までに指定した宿題をやってくるように」


 講師が出ていくと、教室には脱力した空気が流れた。


「いやぁ、疲れたね」


 思わず隣に声をかける。


「はい。これが夏休みの間ずっと続くと思うと……少し気が重くなります」


「いや、本当にそれ」


(あれ? 普通に話せてる? 俺……別に嫌われてない……?)


 そんな淡い期待が胸に生まれた瞬間、席を立とうとした俺を幸來が呼び止めた。


「あ、あの!」


 緊張した声。思わず振り返る。


「元宮くんのおかげで……今みたいな自分に変わることができました」


 幸來は鞄を掴み、顔を真っ赤にして立ち上がる。


「では、また」


 それだけ言い残し、逃げるように教室を出ていった。


 あまりの突然の言葉に、その場に取り残された俺は思考が追いつかず――。


(“今みたいな自分”…? え、それって……勉強についていけなくなった自分ってこと?)


 胸がざわつく。


(ってことはつまり……“元宮くんのせいで学校休んだから今みたいな成績に落ちたんだけど? どうしてくれるの?”って意味⁉︎)


(だからあんなに顔赤くして……怒ってたのか!?)


 理解した瞬間、俺は崩れ落ちそうになり、近くの机につかまった。


(いやいやいや、だから俺が何したって言うんだよ〜!)


 一方その頃、当の幸來は――。


 頬を赤らめながらも、どこか誇らしげに背筋を伸ばし、夏の夕暮れの中を軽やかに帰っていった。

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