8.魔法を学ぼう
「起きなさい。魔法、学ぶんでしょ?」
「んあ」
眠い目をこすりながら体を起こすとキュールの姿が。
「今、何時...?」
「日が昇ったら起きる。当たり前」
呆れた顔で答えてくれるキュール。
早いよ。早すぎるって。ここの季節とか太陽のサイクルとか知らないけど体感は6時前だ。始業ギリギリに間に合うように生活していた一介の学生にはつらいよ。
「いいから早く起きて」
キュールは呆れた顔のまま言う。
「日が昇ったら起きるなんて古代人か」
苦しいですキュールさん。イラついたらとりあえず魔法で首締めるのやめませんか?
§§§§§
「魔法を教えるわよ」
さっそくキュールと外に出てきた僕。ようやく魔法を教えてもらえる。やったあ。
「おねがいします。キュール先生」
「先生...。なんだか気持ち悪い」
なにかおぞましいものを見るような目で見られた。
「ひどくない?」
「まあいいわ。魔法を教えるにあたって、感覚的な教え方と理論的な教え方、どっちがいい?」
「わかりません、先生」
「両方やってみるわね。まずは感覚的な方から」
「感覚的に魔法を使うとは?」
粒子をまとい始めるキュール。
「手のひらの上で力を集めるようにして、それをまとめて、願いを込めて放つ」
言い終わると同時にキュールの手のひらの上に拳大の水の玉ができ、それを放った。
「なるほどわからん」
「とりあえずやってみなさい」
よし、やるぞ!
...手のひらの上に集める?...力?...え?
数分間力んでみたが何も起こらず。
わからないときはわかる人に聞く。これ鉄則。
「何を集めるの?力とは?」
「魔素」
「魔素とは?」
「空気中にある」
「あつめるとは?」
「あつめるの」
「...」
「...」
「諦めませんか?」
「そうね。理論的にやってみましょう」
以外にもあっさりと諦めることを許すのだな。
§§§§§
「キュール先生、理論とはなんでしょう」
「魔法理論のこと。それを今から説明するわ」
「わかりました先生!」
「まず、魔法とは”願いの爆発”。強い願いによって魔素に干渉し、様々な現象を引き起こす。それがどんな現象であるかは使用者の願いによって決まる。まさに”願いの爆発”。願いという形で想像できない人は絶対に実現できないし、それをイメージする力というものが必要になってくる。次に魔素についてね。魔素とは自然界にどこにでも存在するらしいけれどそれは今は気にしなくていいわ。基本的に魔法の使用者は自身の体内に蓄積されている魔素を自身の願いを原点に魔法へと昇華させる。それが魔法の原理。ここまでが魔法士を志す者ならば誰でも知っている基本的な魔法理論」
キュールの初学者でも理解しやすいように噛み砕いてくれたであろう説明。
「なるほど」
なんとなくは理解できる。まるでテストで範囲外のことをやるときの説明を受けている気分だ。
「まずあなたの体内の魔素を感じてみて」
「どうやって?」
「感じれない?こう、体の内側にあるエネルギーを」
「ないです。観測できません」
無理だろ。さっきできなかったの覚えてないのか?
「才能ないわね」
「ひどくない?」
さすがにひどいだろ。感じられないだけで。でもそれが致命的なのかな。
「あなたの魔素量をみてあげる。それでなにかわかるかも」
「お願いします」
キュールは、僕の腕を触った。脈を取る看護師か。そんなのでわかるの?
「終わったわ」
早いな。そんなにすぐ終わるものなのか。
「結果は?どう?」
「終わったわ」
同じ言葉を続けるキュール。
「何が?」
「あなたの魔法士としての希望」
「は?なぜ?」
「少なすぎるんだもの。体内の魔素を感じることができないのも当然よね。ないんだから」
めっちゃ笑うじゃないかこの女。まるで初めから才能がないことに気づいていたような素振りだな。
なにか解決方法はないものか。