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魔素とはただのエネルギーらしい  作者: くじらさめ
第一章 異世界へ
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6.魔法が使いたい

「キュール、僕に魔法を教えてくれ」


「めんどくさい」


「そんな事言わないでさ。ほら、少しくらいいいじゃないか。僕だって空を飛んでみたい」


「あなたにそんな才能があるの?」


「魔法ってもしかして才能の世界?」


まずいな。生粋の地球人の僕に魔法の才能があるなんてわからないぞ。例の転生者は転生のときに才能がリセットされたかもしれないけど僕はただ転生してきただけだ。この身は地球にいた頃のままのはず。


いや待て、ならばおかしくないか?なぜはじめにあんなに高いところから落ちてきて無事なんだ?めちゃ痛かったけど。動けなくなってけど。普通なら体が砕けているだろう。もしやキュールの仕業か?


「キュール、はじめて会ったときに落ちてくる僕を魔法で支えてくれた?」


「なによ急に。昔話でも使って魔法を教えてもらう説得材料にでもするつもり?」


「ちがうよ。ただ気になっただけ。」


「私は何もしてないわ。あなたが降ってきて、それをただ眺めていただけ」


ひっでえなこの女。少しくらい助けろや。


「助けてくれればよかったとか思っているでしょう?」


ばれるかやはり。


「しかたないのよ。私に空から降ってくる人を支えるだけの魔法出力はない」


「でも君は飛べるじゃないぁ」


「文章読めないの?”魔法出力”が足りないの。”魔法出力”というのはその文字通り魔法を行使するうえでの出力限界。私はわたし自身を浮かび上がらせるだけでせいいっぱい。あなたを助ける余裕なんてない。」


「そうなのか」


なるほど、キュールはなにもしていないのか。


え?なんで僕生きてんの?地球にいた頃に飛行機から落ちて生還した人がいるって聞いたことはあるがそれは干し草だか木々だかをクッション代わりにしてなんとかじゃなかったか?僕は地面に直でどーんだぞ?これはおかしい。うーん、なぜ?なぜ?


「なにか考え語としているところ悪いけどもう日が暮れてきたわ。どこか行くあてがあるの?ないでしょ?」


その通りなんだが言い方が腹立つな。


「仕方ないから泊まっていくといいわ」


「いいの?僕、男だよ?」


「別に構わないわ。あなたに私を襲う勇気なんてなさそうだし、いざとなったら魔法の一つも使えないあなたを拘束することなんて容易いわ」


その許容の仕方、非常の不愉快なんですけど。


「まあいいから。夕ご飯作ってあげるからお風呂にでも入ってて」


「お風呂あるの?」


「当然じゃない」


この女、裕福な生まれだな?外で見たがこの家は森の中、そんな不便なところでお風呂を当たり前と言えるなんて絶対にお風呂が日常の生活を幼い頃からしていたに違いない。どうせ異世界なんてよくて中世あたりがデフォなんだからそう予想した。


「じゃあお言葉に甘えて」


「いってらっしゃい」


うん、お風呂、大きい。


は?こんなところで一人暮らしの女の子がこのサイズのお風呂に日常から入ってるの?おかしくない?羨ましい限りなんだけど。


悔しいから長風呂してやる。うんとな。


§§§§§


「あの人、なんなんだろう」


私、キュールは夕飯の準備をしながら考えていた。


急に空から降ってきて、異世界人だと自称する。


完全に危ない人じゃないか。今日は泊めてあげる約束をしてしまったからしかたないけど、明日には追い出していまいましょう。


でも見ていておもしろいのよね、あの男。一人でここで生きていくのにも退屈していたところだし、自立できるまでここに居候させるのもわるくない。


よし、決めたわ。あの男を住まわせてみましょう。きっとあの男のことだから拠点としてこの家を提供するだけで泣いて喜ぶわね。ついでに魔法を教えるのもいいわ。どうせあの男には才能がない。私レベルに届くことなんて天地がひっくり返ってもないわ。


そうと決まれば早速行動ね。さあ、居候、楽しませてくださいね。


しかし、あの男、お風呂長すぎない?あれから1時間は経ってるわよ?夕飯は完成したし、気は進まないけど自分のおもちゃの管理くらいしなきゃね。しかたないしかたない。


§§§§§


「なにやってるの?そんな長い時間」


「わあ!急に入ってくるな!」


「もうご飯できたし、1時間もなにやってるのよ」


「1時間?まじ?」


「まったく、早く上がりなさい」


あんたはお母さんか。


思う存分堪能したのは事実だあがってやろう。


「いい湯だったよ」


「それはよかったわね。ご飯食べちゃって」


「お母さんか」


「ちがうわ」


声に出してしまった。いけないいけない。


「ん、美味しいよ」


「それはどうも。ところで魔法を教える件、いいわよ」


「ほんと?」


「ええ、あなたにはきっと才能があると思うわ」


「まじ?やったあ」


こんなにも柔らかい笑顔で言われたら信じるしかないだろ!頑張るぞー!


「あのさキュール、今日、僕はどこで寝ればいいの?」


「床」


「え?」


「床」


「なるほど、それは間違ってる」


「この家には私のベッドしかない。あなたは床で寝なさい」


「客人にはもっと優しくしろ」


「客?あなたはレディを床に投げてベッドを独り占めするつもり?鬼畜ね」


「そうじゃねえよ」


「じゃあ床で寝なさい」


「なんかこう魔法でなんとかできない?」


「魔法で気絶させて朝に起こせばいいの?」


「ちげえよ。新しいベッドとか作れない?」


「無理よ。生成魔法とかコスパ悪すぎるわ」


そうかあ。無理かあ。


「わかったよ。床で寝る」


「あ、ソファが空いてるわよ?」


「それを先に言え!」


この女、遊んでるな?


「もう寝る!」


「はいはい、おやすみなさい」


寝てやる。不貞寝だ。


§§§§§


「ハーイ♡アラタくん!元気してる?」

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