2.受験生、異世界へ
「今日も一日がんばったー!」
僕、三原新はただの受験生。6月の梅雨直前、自転車で爆走していた。
「紫の人、やっぱおかしいよ。あの平衡の問題はきついって。特に問3。」
僕は夜の塾帰りに独り言として塾の軽い復習をしながら自転車で走るのが日常だ。
ちなみに紫の人とは塾の化学の先生のことね。いろいろ外れてるけど1番頼りになる先生。彼は僕の最高の恩師の1人さ。
おそらく道行く人からしたら1人でよくわからない単語を羅列しているヤバい人だが損のことは気にしない。
僕は今ハイなんだ。
なぜか?
聞いて驚け。
この僕は5月の全国模試で1000位を切ったのだ。
すごいだろ?すごいだろ?意欲に満ち溢れてくるよね!
おい、そんな性格で友達がいなさそうとか思ってないか?黙れ黙れ。いるわい。
...いるよ?ほんとだよ?僕を泣かせようとしないでくれ。
おっとそうだ、この道、この先に人間に見える置物?箱?があることを僕は知っている。何年この道を通っていると思っているのだ。その箱?は暗いところで見ると人の形に見えるのでな。よくビビる。まああらかじめ構えておけば何の苦でもない。ほら、ここに...
「は?」
まじで人の形してるんだけど。自転車止めちゃったじゃん。ふざけやがって。
好奇心に勝てない僕。んー、暗くてよく見えない。明かりは...スマホでいいか。
スマホで照らしてみる。うん、きもい。
悪趣味だな、この像。建てた人の顔が見てみたいわ。ところで材質はなんだ?銅っぽくもないんだよなあ。石でもないし。もちろん金の輝きでもない。銀白色の金属光沢?ほとんどの金属じゃねーか。
あれ?光った?まさかな。
...まさかじゃない。光ってる。マジで。もしかしてヤバいか?
かーえろ。
光に包みこまれる僕。
...ですよねえ。やらかしたなあ。