この小説の9割はある動物の話が占めている
この小説の5割はWikiを3割はその他のサイトを参考に、残りの2割は深夜テンションで書かれています。
あめの音がガラスを打ち付ける教室、ぼくは彼女と二人きりでただここにある。
ぼくはいつもの様に本に目を落としながら意味があるのか無いのか分からない話に耳を傾ける。
今日のテーマは確か
「なあ聞いてるか?聞いてなさそうだからもう一度最初から話してやる、だからちゃーんと聞いてろよ」
……懇切丁寧に教えてくれるらしい。
少しは聞いているという姿勢を見せようと本から目を動かし彼女を見る。
「人間の血液型はA・B・O・ABの4つに大まかだけど分けられるって話だろ?」
「そんでもってゴリラだ」
ゴリラ?
「ゴリラの血液型はB型しか存在していないって聞いたことないか?ネットニュースの雑学クイズとかSNSのつぶやきだったり動画だったりでさぁ」
割と気になる語り出しだった、もう少し真面目に聞いておくべきだったか。
動画なり写真やらストーリーやらが主流のSNSはスマホに入っているだけであまり見たことはないが確かに目にしたことはある話ではある。
「実はこの話、嘘らしくてさ」
「ニシローランドゴリラ」
「学名ゴリラ-ゴリラ-ゴリラっていうこいつらしか血液型がBオンリーのゴリラじゃないらしいぜ」
そうだったのか、というかなんで彼女はそんなことを知っているんだ?
「正確にはニシローランドゴリラ以外にもなんだっけか、えーっと、そうそう!同じニシゴリラ目亜種のクロスリバーゴリラもB型なんだよ!」
「なんでも世界に存在するゴリラの内9割がニシゴリラらしくてよ、この2種類にはB型しかないからってのがゴリラはB型しかいない!ってゆう話になったらしいぜ」
普通に知らない話だった。
クソ下らない雑学で構成されているぼくが知らない話を持ってくるだなんて……
そんでもってここぞと言うばかりにドヤ顔をしてくる彼女が目の前にいる訳だが、なんというか微笑ましい。
見ているだけで心がポカポカしてくるというか
「ちなみに、かの有名なマウンテンゴリラさんはヒガシゴリラ目亜種に分類されるらしい!!」
……まだ話は続くみたいだ、心して聞かせてもらおうか。
「マウンテンさんと同じヒガシゴリラ目亜種でニシローランドゴリラと対になっているヒガシローランドゴリラは約3800頭、マウンテンゴリラさんは約600頭しかいないんだってさ」
「同じゴリラのニシローランドゴリラは35000頭だぜ?これってマジヤバくね?」
マジでヤバいと思う
「だからそんなに大変なことになってるゴリラのことも知らないで、あたしのことをゴリラ女とか言ってるあいつらにムカついてさぁ~」
この話でそこにオチが行くようなことがあるのか、確かにまあ身長は高いしバスケ部だから体格もいいしあとすごく可愛い顔をしているから持たざる者の僻みだとぼくは思うけれど
「だから張り倒した」
張り倒した⁉
いやでも確かにまあ多分色々と納得がいくことは多いな、朝練習には欠かさずに行っているはずなのに二時間目から登校して来たり、部活が休みの日にしかこう言った時間は無いはずなのになんでなんだろうとは思っていたけれども。
先生に怒られていて授業には遅れて参加、暴力沙汰の罰として一人だけ部活に参加できないようにというところだろうか。
「あたしなんかと一緒にされたゴリラの怒りとゴリラをバカにしてるって思ったあたしの怒りが混ざって出力?されたのが」
『森の賢者はこぶしを握らない』
彼女はやっぱりゴリラかもしれない……
なんで混ざって出力されちゃうかな~混ざるってことは少なからず自分でもゴリラって思ってるんじゃないの?もう何も分からないけど。
何ならさっき再現したであろうセリフを言っているとき彼女の後ろになにかこう……偉大な銀の背中をした何かがサムズアップをしている姿が見えたような気がしなくもないんだが。
「まあでも職員室であいつにめちゃくちゃに謝り倒して許してもらえたからよかったよ」
「なんでそんなことをしたのかってゆう話で一夜漬けで仕入れたゴリラトークをしまくってゴリラのすばらしさを教えてゴリ友も増えたし」
「結果良ければすべて良し!みたいな?」
一体何なんだゴリラトークって、ゴリ友とは何なんだ一体!
唯一の友達がゴリラに浸蝕されていると考えるべきかそれとも一夜漬けでここまでゴリラに共感して話を展開させられる所を賞賛するべきなのか。
というか彼女は何でここまでゴリラの話を仕入れてきたのか、昨日の理科の授業で学期末テストに出るだなんていわれていただろうか?でもそういうことがあるのならぼくが覚えていないのはおかし
「そんでさ、どうだったあたしの話!」
「いっつも面白い話聞かせてもらってばっかだからさ、たまにはあたしからもしないとなんてゆーか割に合わない的な?」
ぼくの為にわざわざ調べてきたのかぁぁ!!!
うわぁ、なんというか申し訳ない気持ちで押しつぶされそうだ、そんなにキラキラした目でこちらを見ないでくれ。
ぼくとしては貯めに貯めた雑学を披露する相手が彼女しかいないというのと、そもそも彼女以外に話そうだなんて考えていないからなぁ。
テストの点とどうでもいい雑学しか誇れる物が無いからしてこの枠を取られるわけにはいかない!
「この話知ってた?知らなかった?教えて教えて!!」
これは少し不味い状況になってしまった。
素直に知らないと言ってしまえば雑学大臣の座を辞さなければいけなくなるかもしれない。
だけれど知っていると嘯いた場合恐らく不貞腐れてしまうだろう、そういった可愛げのあるのが彼女の良いところだから。
ここは日々の生活で培った相手が自分の好きなように捉える表情をしながら頷くしかない!
コクコク
「マジ⁉こんな話まで知ってんの!」
「さっすがこの学年で一番の成績保持者!」
なんとか……なったのか?
なんでかは分からないけれどとても機嫌が良くなっているし多分どうにかなったんだろう。
「さすがに知らないと思ってたんだけどやっぱり知ってたか~ふふ~」
「知ってても知らなくてもどっちでもいいって思ってたんだけどここで知ってるって答えてくれるからずっとずっとずぅ~っと!!好
チャイムが鳴る 17時30分 最終下校の時間
「もうこんな時間~?」
「今日も一緒に帰ろっ雪乃ちゃん!!」
「ああそうだね、帰ろうか“あめ”ちゃん」
あめの音は止んでいる
「ところでなぜマウンテンゴリラには敬称を付けていたんだい?」
「だってカッコ良くない?マウンテンって」