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春風はやがて  作者: 海凪 悠晴
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卯月の章(五)

 翌日、四月十四日火曜日。今日も六時間の授業が終わって、掃除も終わると昨日と同じく、すぐに帰った。

 思えば、昨日は比較的「安泰」な一日だったのかもしれない。今日は学校で授業中に二、三のヘマをやらかしてしまったのだ。

 一限目は数学の授業だった。今日は「数学β」のほうである。昨日の「数学α」の教師とは違う教師が担当する。赤ら顔の背の低い中年の男性教師だった。どうも左利きのようらしく、左手でチョークを持って授業を進めていた。夏樹が赤ら顔の板書に合わせるようにノートを取っていたら、いきなり赤ら顔から「こら、ソコ!」と怒号が飛んだ。誰が怒られたのだ、とびっくりしつつ夏樹も思う。だが、赤ら顔が指を差していたのは夏樹の方向へであった。そのことに気がつくと、自分はいったい何で怒られるような真似をしたのだろうと、夏樹はうろたえそうになる。

「折原か。あとからノートを取る時間を設けるから、俺が板書しているあいだは前を向いて授業を聞いていろ、と最初に言っただろう」

 どうも夏樹はその注意をよく聞いていなかったようだ。ああ、入学早々さっそく恥さらしをしてしまった、と焦る夏樹。昨日の化学で第一号として挙手して発表したのはよかったのかもしれないけれど、個人的に怒号を飛ばされるのも夏樹が第一号であったようだ。

 五限目のグラマーすなわち英文法の時間にはうっかり居眠りをしているとき、当てられてしまった。しかも間違えて英語は英語でもリーディングの教科書を持ってきていたのだ。グラマーの先生はグラマーではないけれど女性教師。それも気の強いタイプの教師である。「バッカモーン!」なんて言われてしまった。

 掃除の時間。名列順で夏樹の次とさらにその次に来る加藤と草野の二人がひそひそと自分の噂をしているように感じてしまった夏樹。だけれど、長田は気にするなと言ってくれた。



 その週は土曜日も半日授業だった。基本的に土曜日は月二回だけ学校がお休みだが、その他の土曜日は登校しなければならない。

 土曜日の夜、夕食が済んだあと、自室で数学の勉強をしている夏樹。ラジオを聴きながらのながら勉強である。授業が始まってからたったの一週間だけれど、なんだか高校生活に疲れてしまったと感じている夏樹。今週はさっそく何度もヘマをやらかしたし。数学はまだ好きな科目だけれど、あの赤ら顔、栗原(くりはら)先生というのだが、にはさっそく目をつけられてしまったんじゃないのかと思う。

 ちなみに噂によると栗原先生は左利きであることから、「サウスポー」なるあだ名で生徒たちの間でひそかに呼ばれているらしい。そして大の巨人ファン。巨人が負けた次の日にはたいてい機嫌が悪いとのこと。あの前の日にも巨人が負けたのかな。新聞を取ってくれば解るかもしれないが今更調べる気は夏樹にはない。ただ、今週習った公式などのおさらいと、来週の予習をしておく。「数学α」の先生からは週末の宿題も出たのだし。

 数学の勉強がひととおり終わるともう午前零時を回り、日付も変わっていた。数学だけでえらく時間を掛けてしまった。ほかの科目の勉強はまた明日、というか今日の朝起きてから、か。そんなときにラジオから音楽が流れてくる。歌詞の一部を聴き取る。なんだか今の夏樹の心の状態に深く染み入るものだった。とりあえず、今宵はそろそろ眠りに就こう。そう思い始める夏樹であった。

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