=異世界での防獣対策特集= 異世界農業の魔獣の傾向と対策②
月刊 異世界農業 第3号
=異世界での防獣対策特集= 異世界農業の魔獣の傾向と対策②
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あれから2日後。
「ヤンマさんそろそろ工房さんに連れて行ってくれません?」
「あーそういえば。そんな話してたな!忘れてたぜ!」
こっちのゴリラは3歩歩くと忘れるらしい。
「まぁこんだけ出来たんなら連れて行ってやってもいいぜ!」
忘れてたくせに...。
「あっ。言い忘れてたが20スクアドルほどあるからな!」
「げっ。」
ヤンマさんは魔力式荷車を扱えないので徒歩である。
20スクアドルは20キロくらいである。
「坊ちゃん、行くぞ!」
「わぁわわ。置いてかないでー!」
魔力とは、ただ単に魔法を使うためにあるわけではなく
身体強化やエネルギー変換などに使われる。
農業ギルドでは大雑把ゴリラを追いかける時と魔力式荷車を使う時に使われる。
「おっ。結構あつかいに慣れてきたな!」
「お陰様で。」
「一応な、これも基本があってのことで、クラースは魔力があっても身体の基礎体力が追いつかないから俺についてくることは出来ないんだぜ!」
「そりゃどうも。」
絶対、魔力式二輪を手に入れたら追いかけ回してやる!!!
〜30分後〜
「坊ちゃん!あそこだ!」
遠くに村の囲いが見えてきた。
「あそこは、工房などが集まっている集落だ。」
工業地帯みたいなやつ?
「どうして、王都から離れたところに集まるんですか?」
「リスク回避ってやつじゃないか?」
リスク回避だと!そんな言葉知ってるとか夢じゃないかな!
「リスク回避って?」
「しらね!クラースが言ってたからな!」
「ははは。」
そんなもんだよね。ゴリラの成長に期待した自分が恥ずかしい。
そして一軒の家の前で立ち止まる。
「ここだ。ここ。」
「おっちゃん!今、いいか!」
「ん〜。」
大柄な男性が奥から出てきた。ゴリラといい勝負のガタイだ。
「おー。ヤンマか。どうした今日は。」
「うちの坊ちゃんが対物理フェンスに興味を持ってどうしても工房に行きたいっていうからさ!」
「ちょっと見せてやってくれよ。」
どうしても とまでは言ってない。
「そうかそうか!うちのは質がいいからな!」
「坊ちゃん!この人はセクタさんだ。」
「セクタだ!よろしくな!よし!坊ちゃん入りな!」
「ミノル=ホランドです。よろしくお願いします。お邪魔します。」
うなぎの寝床のような建物を抜けると奥は開けていて工房らしき建物があった。
「ここで作ってるんだ。」
中に入ると製鉄所のような設備のある工房となっていた。
「すごーい。」
「ここで金属を溶かしてだな。こいつから押し出して棒状にするんだ。」
炉から取り出した金属を丸く穴が開いた装置に流し込んで押し出して千歳飴みたいなものにして
取り出すとのこと。
「それを熱いうちにひっぱるんだ。」
「これを均等に細くするのはなかなか難しいんだぜ!」
やり方こそ手動だが、工業技術はなかなか進んでる気がする。
「セクタさん、聞きたいことがあるのですが。」
「おう!なんだ!」
「このワイヤーに魔石を練り込むって可能ですか?」
「どうだろうな。やってみないとわからないがいろんな金属を混ぜて強度を高めるなどはしてるから不可能ではないんじゃないだろうか。」
「で、それでどうしようってんだ?」
「先日、ギルドの職員より肥料作りを学びました。」
「その時に反属性の瘴気を打ち消す効果があると聞きました。」
「仮に魔獣にも苦手な属性があるとしたら忌避効果を発揮しないかなと思いまして。」
「それは興味深いなぁ。」
「作ってみてもいいが、うちも慈善事業じゃないんだ。誰が払ってくれるんだ?」
あぁそうだった。
農業ギルドに入ってからほとんどお金が必要なかったから、通貨の流通なんて忘れてたぜ!お金のいる場面でもホランド子爵家の家紋を見せたら良かったし…。
「そうでしたね。じゃあこの件を関係省庁に話してみます!」
「そうしてくれ!」
と話がついたところで、
「おっちゃん!これなんだ!」
とヤンマさんが子供のような目でこっちを見ている。
「おお。それか!それは新型のつり橋の模型だ!」
「橋?」
「うちのワイヤー技術で魔獣が乗っても壊れない橋が作れないかと思ってな!」
「おっちゃん。魔獣が来たら橋を切るのが普通だろ。頑丈な橋なんて魔獣入りたい放題じゃないか。」
「ふんふー。ヤンマよ…橋の横にある巻取り機を巻いてみろ。」
「なんだよ。これか?」
とグルグル巻くとワイヤーが巻き取られ跳ね上がった。
「どうよ!」
「おお!こりゃすげー!」
「いつかこれが架けられたらいいんだがな!」
「おっちゃん!楽しみにしてるぜ!」
頑丈な橋を作るというのは、大事なことである。
魔獣が来るたびに橋が切られて
街道が分断されてしまうと、
流通が悪くなる。
インフラ整備も進化しようとしてるんだなぁ。




