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あるいは

モーメント。

ざく、ざく。足音が。

ひばり。もう舞い上がれない夕暮れ。

ネオンもない田舎だもの。

つぶれかけのホテルと 客のいない料理屋が 向かい合わせの交差点。

ここで高校生をしているってのは、なんだか寂しいことだよね。

ずっと遠くで明るく楽しく生きてる人たちがいて

でもまあ意味ないってことではおんなじかな。

そうだよ。雲はちぎれ

夕闇に見えなくなる。

ああそうか。ひばりだと思ったのは

私の一部。

それがなくなったら

私は高校生でなくなる。

もう置いていくよ、君。

いつまでもそこで そうしていなさい。



結局恋愛なんて すべて損害のようなもの

と、隣の人が言ってた。

おもしろい話だ。人間っていう感じがする。

人間はいつもおもしろい。なくしたものについて話す。

たとえばいつだったか、赤ん坊がちぎれた雲を惜しんでいた。

インドの音楽が流れ、横浜のチェーン店が話題に上る。

三枚目の俳優の話。または、カルボナーラの由来について。

炭素を散りばめた白い皿があり、思いのほか紅茶はおいしく、

煙草の煙がいつか通り過ぎた田舎の国道沿いの喫茶店に似ていた。

ねえダーリン

と、隣の人が言った。

笑いが起こった。美しい素敵な笑いだと思った。

その美しさは地中海のようで 明るく暖かく

海沿いの街に白い建物があり 乾燥した大地があり

世界とは何なのかという答えを

見つけだせないでいる私たちにとっても 魅力的なのだった。

ごちそうさまです

と、隣の人が言った。緑色の街へ帰ります。さよなら。

ドアの隙間から見えた街は 日差しが明るく 緑色をしていて

隣の人がいなくなったこのテーブルは

静かで冷たい 場所になった。

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