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五月
『五月について』
どこへ行きたい?
どこへでも。五月を感じられる場所ならば。
朝の喫茶店の 窓から差し込む午前の光
グラスに入った氷が輝き 今日は暑くなるかなと
あなたの声はささやかに 五月の風が吹く予感。
どこへ行きたい?
どこへでも。五月は何でも美しく見えるから。
この世界もいつか滅びるのでしたっけ。
来月? 梅雨が来るのとともに。
雨もなかなか悪くないですけれど
その後の夏を考えると 気が重いものなのです。
『五月のトイレについて』
言いたいことはなくなってしまった。もうおわりにすべきか。
トイレにすわり 紙の残りが少ないのをながめる。
外に出れば 日差しが暖かいというのに 暗くて冷たいトイレで
決断できないまま。
すきま風すら暖かい。日差しの匂いのする花の匂いを含んで、
普通 普通普通 こちらは普通でございます
と、外の風が吹き 私をさいなむ。
いやだあ、出たくないぃ。
と言いながら大便をもよおし、致し
いくらかのお釣りをもらい、水を流す。
尻を拭き 紙は、
まだ終わっていない。