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木星からの彼女
「私、木星から来たから」
と彼女は言った
だからよいのか、わるいのか
僕にはわからなかった
彼女は空を見ている
窓から入ってきた風が髪を揺らす
「木星って」
と彼女は言った
「重力が強いから」
なるほど
たしかに
木星は重力強そうだなあ
と僕は思った
それよりもそういえば彼女は木星から来たのか
来たのか?
謎
「近づいたら死ぬよ」
そうなんだ
と僕は思った
木星、近づいたらたしかに死にそうだなあ
そういう見た目をしている
「私は死なないけど」
と彼女は言った
「木星から来たから」
「木星から来たんだ」
「そう」
彼女は少しさびしそうな顔をした
○
世界が滅ぶことはわかっているから
まあ覚悟というか
そうなんだなあって気持ちはあるよ
タカマキさんは言った
外は雨が降っている
薄暗い秋の日
教室はもう
滅亡へ向かって傾いている
こういうときに僕はなんて言えばいいんだろう
教室の入口に先生がやってきて
「早く帰りなさい」
と言った
どこへ?
「どこへ?」
とタカマキさんはたずねた
「それはもちろん」
と先生は言った
言ったけれどもそれは
もはや言語ではなかった




