表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/42

心が豊かだった

もうお金がないんですよね

と、愛にも似た言葉。

干からびた財布の底に染み付いた残り香が

かつてそこにわずかながらあったお金の存在を感じさせる。

稼ごう、という気力もなくなった。

どうすればいいんでしょうね?

彼はそうつぶやくけれども、

誰かが何かをしてくれるとは期待していない。

幸いにも食べるものと住む場所はとりあえずありますので。

そのまま一生を終えてしまうかなあと、ひとりごと。

気力の減衰はよくない。

本当に、なにもかも、

終わりにしてしまうので。

残り香が、なつかしいなあ。

昔はあんなにも

心が豊かだったのに。



小学生の頃だった。

雪道を歩いていた。

学校からの帰り道。

吹雪が視界を遮る。

スリップした車が、

僕の体にぶつかり、

僕は跳ね飛ばされ、

深い雪に埋まった。

しばらくしてから、

おじいさんが来て、

掘り出してくれて、

九死に一生を得た。

そのおじいさんは、

いまはもういない。



架空の猫を飼っている外国人さんが隣に住んでいる。

彼は近くの中学校で英語を教えている先生で、

僕に会うといつもとても流暢な日本語で猫の話をしてくれる。

「先週の日曜日は登山に行きました」

と、彼は話し始めた。

「さほど標高は高くありませんので、日帰りで」

朝のゴミ捨てに行こうとしたところだった。

「まさおも一緒ですよ、もちろん」

まさおは架空の猫の名前である。

「途中で疲れたというのでザックに入れてやりました」

そこで彼は半開きのドアの下を見る。

「まさお、勝手に出てきてはいけませんよ」

そして彼は架空の猫を抱き上げた。

「ああ、呼び止めて失礼しました。まさおに餌をやりますのでこれで」

彼は家に入った。

「ぱたん」

とドアが閉まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ