と言った
「あなたのこと別に好きじゃないんだけど
来たければ来てもいいよ」
彼女は歩いている。
ものすごい速さで。
僕は必死についていく。
風景が流れていく。
遠くに山が見える。
大きな川にかかる橋を渡る。
田んぼの中の土の道を行く。
山の麓のちょっとした広場で立ち止まる。
「ここでお昼ごはんにしよう」
彼女はベンチに座ってお弁当を食べ始めた。
僕はお弁当を持っていないので見てるだけ。
「あなたのこと別に好きじゃないから
あげない」
と彼女は言った。
☆
「いわゆるそういう……」
私はそこで口ごもった。
何を言おうとしていたか忘れた。
「何でしたっけ」
と、インタビュアーにたずねる。
「さあ……私に訊かれても……」
と彼は言った。
私は両手をろくろ回しのような格好にしたままで考えた。
何も思い出せなかった。
「そもそもこのインタビューの意味は何なのか……」
「うーん……」
彼もしばらく考えていた。
顎に手をやり沈思黙考した。
そして、
「特にないですね」
と言った。
☆
人生が、いやなほうに向かっている、
という気がしても気にしないのがよい
そういうものだと思って生きるのがよい
……と、お師匠様がおっしゃった。
なにしろお師匠様は偉大な人だ。
若い頃は誰よりも強く、
悪い奴らをちぎっては投げちぎっては投げ
長じて後は頭脳明晰、稀代の天才と呼ばれ
年をとっては心優しき好々爺。
お師匠様を悪く言う人はいない。
それだから私は
そういうものかと思った。
しかし美少女が異を唱えた。
あなたは騙されています、あのじじいに。
なんてことを言うのだ
わたしは憤慨した。
怒りのあまり爆発した。
粉々に砕け散って肉片になった。
それを烏がついばんだ。
「おいしいお肉だ」
と烏は言った。




