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大人になった

「もう知らんがな」みたいなことであった

あの日の夕暮れ

君は用水路にかかる細い橋の上で水面を覗き込んで言った

キャベツの切れ端みたいなのが流れていった

あるいはカラスが鳴き 遠くで犬の鳴き声が聞こえる

夏は終わったというのに暑い日で

僕たちは半袖から出ている腕に汗をにじませていた

「ぜっこうする」

君は友達のかおりちゃんに怒っていた

理由はよくわからなかった

ただ怒っていて 僕は面倒だなあと思っていた

結局のところかおりちゃんはその月の終わりに

お父さんの仕事の都合で引っ越してしまい

よくわからないまま話はうやむやになった

それを忘れたころ 僕たちは大人になった



大人になるというのもまたよくわからない話で

たとえば僕はいま京浜東北線で東京駅と神田駅の間を移動している

子どものころの僕が思い描いた大人の姿 かもしれない

東京で働いている

都会で忙しくしている

しかしそれだけのこと

大人になるとはそれだけのこと

隣をオレンジ色の中央線が走っている

それだけのこと



田舎に帰ろうと思い立ち

バックパックに荷物を詰めて新幹線に乗った

特急を乗り継いだ

レンタカーを借りた

三十分ほど走ってたどりついたのは

草が茫々になった空き地

実家がなくなってからずいぶん経った

悲しいとか寂しいとかの気持ちはもう無く

ただ隣を流れる水路にかかる崩れかけの細い橋を見て

懐かしいと思うだけ

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