ごはん
『朝ごはん』
私の朝ごはんの パンはみっつ
噛めば噛むほど エネルギー
むさぼる
かみちぎる
唾液のとびちり
ウインドサーフィンをしていた頃は
高原の草原に緑色の草が生え
牛がいて 青空は海の色だった
覚えているかい?
パンに牛乳。
渇いた喉を
湿らす季節。
『カレー』
カレーを食べに来たんだ。
広がる春の風。
回転焼きの屋台があって
いい匂いがして
みんなそうだったみたいに ぼくらの夢が潰えていく。
夜空。
山の稜線がうっすらと浮かび上がる淡い
夜明けの向こうから春が来る。暖かいね。
この道を、子供の頃に歩いたかもしれない土の道を、
歩いていく。
牛小屋があった(たぶん)。
もうその臭みも忘れて。
でもそうだ、ほら、夜が明けたよ。
なんのおもしろみもない 昼 だよ。
『お昼ごはん』
ポインセチアの花が咲く。
ポイン ポイン
「スアー」って、君は言う。
君はいつも言うんだ。そうやって。
鼻が詰まっているのかな。
小学校の廊下。
ガラスの向こうに見える中庭の
むき出しの土に生えるポインセチア。
先生、
トイレに行きます。
階段を落ちてきたボールは
玄関から転がり出て、
車に跳ね飛ばされて、
焼き魚のにおいがする、
お昼ごはん。
『ラーメン』
高菜が食べたいんだって
言ってたよ あのおじさん
脂のしずく
浮かべて
虹色のメリーゴーランド
青空を映す水たまり
指が痛いね
だって 触れても 冷たいばかり
丸い氷の上に乗り
脂の海を くるくる回る
私たちの メリーゴーランド
『晩酌』
お酒を飲もうよ
百年ぶりに 愛を語ろう。
しばらくぶりに会ったあなたは
百年前とあまり変わらず
しかし年齢相応のくたびれと
守るべきものを抱えた責任感が
顔の皺になった。
しわしわ。
美しくはない。
そして 毅然としたその責任感を
美しさと呼ぶつもりはない。
あまりおいしくない酒を飲んだ。
おいしくないねとあなたは言った。
安くて
どうして私たちは
飲んでいるのか
わからなくなり、
トンネルの暗闇が
ずっと続くように見えた。
助けて。
とあなたは言った。
手伝うよ と私は言った、
必要なことは。
それきり 朝がきて
なにものも存在しないみたいに
元に戻ってしまった。