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倍音
○
体がいろいろ壊れて 天井を見ながら
天ぷらが食べたいとか そうめんとか 何か夏らしい
さっぱりしたものがいいなあと思う。
もしも治ったらどこへ行こうかと考えて
私の行くべき場所などどこにもない、
西から東へ流し見る地図の どこにも。
温泉。それもまあ良いですけれど。
海の幸。それもまた。
都会のコンクリートに埋まって生きる。あるいは幸福のかけら。
○
ぷつぷつのかゆみ いつのまに できましたか。
田舎のおうち 外でかえるが 鳴いている。
虫は出入り 自由。 そうして
乙女の柔肌は 刺され
かゆい。
あああ やんなっちゃいます。
川でとれた鮎がおいしい 季節です。
蒸し暑く 焼かれるのは 私のほう。
うだる うだる
のびて とけて うすっぺらくなった。
ひらひらと つまらぬ、 どこにも つまらぬ
人間 であります。
○
夏の深い緑の中に 埋没。
頭上に見える青空や かすかにきこえる蝉の声
左ききの左手で 草の下のほうをつかんで抜こうとするも
抜けず すべらせた手に 切り傷。
ぞうりの下でみみずが這っている。 うじゃうじゃ
どこからか あぶらぜみが飛んできて ひたいに当たり
げげげと鳴いて どこかへ行った。
草を倒し 道をきり拓く。 おうちへ帰る道。
冷たい麦茶を飲んで わらびもちを食べられたなら
幸せな夏。
縁側でせんぷうきが 回っている。




