11-8 転進
クレアの言葉を聞いて、アーシャも顔が真っ青になった。
「そ、そりゃ色々やり直せればとは思いましたデスが……。ワタシの安全が保証されないのでは話が違うというものデス。」
シアはここで一度既にレストに協力する事にしているという話を持ち出そうかとも考えたが、話の流れ的に、既にその方向に固まりつつある事を察した。この場で細かい話をするのは止めよう。まずはグレイスを止める必要がある事は恐らく全員が理解出来た。その話をしよう。
「然、グレイス殺難。常警戒隙無。」
彼女は彼に時偶イラっと来る事があった。何事にも興味が無いように見える。指示を達成しても適当に頷くばかり。それが腹に据えかねて殺意を向けようとした事もあった。だが、常に警戒だけは怠っていなかった。シアですら隙が付けるかと問われれば即答しかねるレベルであった。
「其、グリン居。在何考良分否。邪魔可能性有。」
グリンの本心はレンジ達にも分からなかった。どうも誰も信用していない事だけは理解出来たし、何かしら企んでいそうだとは思ったが、具体的に何を企んでいるかは分からなかった。
「ともかく。その辺りは皆さんに一任します。」
クレアは地上の事情を完全には把握していないし、干渉も出来ない。丸投げのようになってしまうが、そう言わざるを得なかった。
「まずご理解頂きたいのは、このままでは皆さんにとっても私たちにとっても不味いことになる、ということです。そこで改めてのお願いです。……皆様の力と知恵を使いグレイスを止めて下さい。」
そう言ってクレアは頭を下げた。
「分かりました。」
レストは当然のように即答した。彼としては平穏な生活が出来ればそれで良いのだが、このままグレイスが完全復活するとなればそれは絶対に叶わないだろう。となれば、ここで阻止しないという選択肢は無い。
「そういう事なら仕方ありませんわね。」
「クレア様。私シェルフ・レアード。クレア教の修道士として、勤めを果たします。」
二人も同意見であった。レストと共に生きる上でも、真っ当な生活をする上でも、アレイトス教を早々に除外しなければならないと思っていた。加えてシェルフは修道士。信仰の対象たるクレアに言われれば答えはYES以外存在しない。
「私はその、神様として崇めてもらうような存在ではないのですけれどね……。」
畏まって言うシェルフに、クレアは頭を掻きながら言った。
「そちらの御三方もお願いできますか。」
「……。」
シアの考えは当然決まっていた。レストと共に行く。そもそもグレイスは気に入っていなかった。それを止めるのが世界の為となれば、むしろ彼女にとっては好都合というもの。
シアは二人をちらと見た。だが問題はこの二人である。この二人がちゃんとした判断を出来ず、ここで協力しないという選択肢をとった場合、自分はおそらくアレイトス教に居られなくなる。そうなると寝首を掻くであるとか、あるいは何か仕掛けておくであるとか、そういう事が難しいように思えた。二人の出方を見てからの方がいいだろうというのが彼女の考えであった。
さてその二人はというと、まずレンジは真っ青になっていた。聞いてない。そんな事になるなんて全く予想していない。ただ自分の野望のために利用してやろうと思っていただけなのに、どうしてこんな事になるのか。絶望感に溢れていた。
アーシャもまた絶望していた。このままでは世界崩壊に手を貸した戦犯として名が残ってしまいかねない。いや残るだけならまだ良い。残りすらしないかもしれない。グレイス以外誰も覚えていない。いやグレイスも早々に忘れるだろう。記録にも記憶にも残らず、痕跡を残せないまま消えていく。そんな恐ろしい事があり得るのか。アーシャは戦慄していた。
「ももももももも勿論である!!だから吾輩悪く無いって事にして!!」
「ももももももも勿論デス!!だからワタシは悪く無いって事にして!!
二人は同時に言った。
シアははぁと溜息をついてから言った。
「……こういう時はちゃんと話す。私は勿論協力する。レストの為にも。」
カーネリアとシェルフの冷たい視線がシアに注がれたが、
「ありがとうございます、シアさん。」
レストのその言葉にシアは頬を染め、注がれる視線には全く気を取られる事が無かった。
「これで全員の協力が得られるということで、いや安心しました。……で、どうしましょう。私は特に策が無いのですけれど。」
クレアが暗い顔で言うと、レストは少し考えた後、口を開いた。
「……では、こういうのはどうでしょうか。」
11話はこれで完となります。
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