11-6 天界
レストが気付くと、彼は真っ白な場所に居た。見覚えのある場所だ。まるで雲の上のように白い。
そこに白髪のサイドテールという髪型で、大体二十代後半の若い外見をして、天女のような羽衣を着た女が立っていた。
これも見覚えがある。自分をここにーーソールディに連れてきた張本人であった。
「クレアさん?」
「はい。覚えていて下さったようで。安心しました。」
忘れるわけがない、とレストは心の中で嘯く。この人のお陰で今の自分があると言って過言ではない。良くも悪くも。
と、周りを見渡すと、カーネリアとシェルフ、シア、あとアーシャと……見覚えのない男性が一人。
「なんで此処に僕達が?」
「こいつら誰よ。」
「此処は何処なのです?」
「吾輩達まで何故巻き込まれたのであるか?」
「つか近すぎるデスよ。あ、今なら殺せるのでは?シアさんやりなさいデス!!」
「ぶぇっくしょん!!無理。」
「そんな事ありますデスか!?」
全員が思い思いの言葉を口にする。
各人1メートルも離れていない。だがシアは手を出したくはない。適当にこの場を乗り切る事にした。
「皆さんに聞いて欲しい事があるのです。そこのアレ……アレ……アレイトス教でしたっけ。その信者の方にも、今みなさんが何をしようとしているのかを。」
クレアは答えられる疑問に答えると、右手に掲げた宝玉を見せた。レストには理解出来た。先程見ていた時間の宝玉だ。
「初めに、私はクレア・スピリット。魂の管理者の一人。」
「クレア……く、クレア様!?」
シェルフがその名前を聞いて目を丸めた。
「ええ。そのクレアです。本当はちょっと違うと言いますか、役割は皆さんの考えているようなものではないのですが、所謂神に近い存在と考えて下さって結構ですよ。」
それを聞いてシェルフは跪いた。
「かかか、神様クレア様にお会い出来るとは!!」
「え、マジモン?」
レンジがアーシャに尋ねた。
「みたいデスね。」
「呆。」
シアがよくわからないといった顔で頷いた。
「皆さんにはこの宝玉の真の意味を理解して、そして憎むべき邪魔者であるあのコンプライアンス違反野郎を処理して頂きたくてこの場にお集まり頂きました。」
クレアは特に後半部分で怒気を強めながら言った。
「……コンプライアンス違反?」
レスト以外の全員が意味を理解出来なかった。
「順を追ってご説明します。まずわざわざ来て頂いたのは、あのイルン修道院が天に近い場所だったからです。あそこであれば私が干渉しやすかったので、あのモローさんに天啓を与える事で、集まって頂きました。迂遠なやり方になってしまった事はご容赦下さい。何分、本来であれば魂の管理者が現世に介入する事は許されないので。今回のように少々面倒な手を使わなければならないのです。」
「はぁ。」
レストはまぁそういう物なのだろうと相槌を打った。世の中には決まりがあり、それに従う必要がある。面倒な話ではあるが。神に等しい存在とはいえ、それは変わらないという事だろう。
夢無いなあ、と彼は心の中でボヤいた。
「本題です。この宝玉を集めていらっしゃいますね?レンジさん、アーシャさん。」
「あ?え?あ、はい。」
「集めておりますデス。」
シアの名前が呼ばれなかった事に気付かないまま、二人は答えた。神々しい光でただ受け答えする以外に何も出来ない。他の者に手を出そうものなら文字通り消されるであろうという威圧感が漂っていた。故に二人は考えるのを止めていた。
「これを集めるとどうなると聞いています?」
「えー、アレイトス神が顕現して世界が混乱に陥り、そして新世界に至る、そんな話であったかと。」
「それが問題です。一部は正しい。ですが一部は誤っています。」
「は、はぁ。」
「結論から述べましょう。まず、アレイトス神などという神はおりません。宝玉を集めて復活するのは、貴方方の教祖、グレイス・ブレイギア。あれが本来の力を取り戻すだけに過ぎません。」




