11-3 慟哭
「がああああああああああっ!!」
アーシャがダンダンと机を叩いた。
「どうした。」
レンジが肉を喰らいながら言った。
「ああもう、吾輩がなんでこう隠れて行動せにゃならんのだ。おまけにお主と一緒に。」
「アンタが一人じゃロクに行動出来ないからデスよね。」
レンジは魔界の住人ということもあって、普通の、ソールディで生活するには大変不向きであった。そこでアーシャがーーアーシャ自身追われる身ではあるがーー匿うことになった。今食べている肉もアーシャが買ってきたものである。
「変装スキルがあって良かったデスよ。」
アーシャのスキルは変装。一時的ではあるが、顔を変えることが出来る。
「スキルというのは便利であるな。まぁこの間はそのスキルと思われる物によって酷い目にあったわけだが。」
「デスね。……そんなことはどうでもいいのデス。あのカーネリアにワタシの店が奪われたんデスよ!!」
「またその話か。」
レンジがこの話を聞いたのは数日前、シアが幽霊屋敷に出かけた後のことであった。それからというもの、彼女は突発的にこの件で苛つくことが増え出した。
「仕方あるまい。あんなヘマしたのだから。」
「むぐぐぐぐぐぐぐ。」
あんなヘマというのはつまり騎士団の協力者を失ったこと、そして空間の宝玉をみすみす奪われた事である。わざわざカーネリアを陥れようとしなければ良かったのは誰の目にも明らかである。
「その件は一旦置いておきますデス。いい情報が入りましたデスよ。」
「いい情報?」
レンジは胡散臭い物を見るような目でアーシャを見つめた。
「なんデスその目は!!宝玉の情報デスよ!!……正確には宝玉かもしれないという情報デスが。」
「曖昧であるな。それ信用して良いのか?」
「少なくともあの連中、カーネリア達も得ている情報みたいデスから、奴らを消すにもいい機会デス。」
「何故それが分かる?」
レンジがそう聞くとアーシャは胸を張って言った。
「ワタシの情報網は既にカーネリアに使われているからデス。つまり情報源が同じという事デスね!!」
「威張っていう事かそれ。」
だが情報は惜しい。少ない情報が得られ、なおかつ邪魔者を消す機会も得られるならそれに越したことは無い。
「……シアにも連絡するか。」
暗殺も視野に入れる必要がある。何せあの三人、特に男のスキルは異常である。本当にスキルなのかどうかすらレンジは疑わしいと思った。だが今の所はそれ以外考えられない。
ともかく、スキルが厄介な相手は暗殺しか無い。それに適任なのはシアである。レンジは連絡魔法でシアに連絡を取った。
『何。」
「あー、ちょっと宝玉かもしれない情報が入ってな。なんでも貴族の家宝が幾つか売られたらしい。貴族の家宝といえば例の宝玉みたいなところあるだろう?だから怪しいのではないか、とここにあるアーシャが言い出してな。」
『放。』
「問題はその情報を敵も、あの憎きカーネリア達も持っているという点なのデス。」
『騎士団組連中。厄介。』
その"厄介"に別の意味が込められていることに、レンジとアーシャは気づいていない。
「うむ。だからお主も来て欲しい。」
『……了解。場所?』
「北地区の山の上にある古びれた修道院だ。北地区の町外れで落ち合おう。この後すぐに合流出来るか?」
『了解。2時間程度合流出来。』
「ではよろしくデス。」
通信魔法を切ってからシアは心の中でほくそ笑んだ。
レストと会える。
……だが下手に会えば殺さない事を咎められるかもしれない。
「むむむ……。」
どうしたものかと考えた結果、一つの案を思いついた。




