9-5 襲撃
厳かな神殿の中、バタバタと駆け回る音が響き渡る。
「んん。なんです……か。」
レストはその音の元を振り返り見て、ギョッと目を見開いた。
大量の魔物達が一斉にレスト達目掛けて突進してくる。
「な、な、なんですあれ。」
その声にカーネリアも振り向く。
「先程から少々煩いのではありませ……んんんんんん!?」
シェルフも続く。
「どしたん……ちょっ……え?」
十、二十、三十、いや、数えても仕方が無い程には多い。
どこにこれだけの魔物が隠れていたのだろうか。レストは考えようとしたが、そんな余裕はなかった。それを許してくれるほど、魔物達の勢いは優しくなかった。
「ぎゃああああ!!」
思わず叫んだ。
「どっからこんなに湧いてきたん!?」
「先程まで私達が通った道ですわよ!?」
シェルフやカーネリアも理解し難いという顔でそれを見る。
「ととととと、ともかく逃げましょう!!えーと、えーと。」
レストは高速移動の魔法を唱えようとしたが、音の元が背後以外にもある事に気づき、ふと前を見た。
どどどどどどという音が響き、神殿が揺れる。そして前方から、同じ数の魔物が押し寄せていた。
「ああああああああ!!」
「挟み撃ちですの!?」
「そんな知能あんのアイツら!?」
レスト達の手が止まった。数の差は歴然。如何ともし難い。
「よし、上手くいったぞ。」
「素晴らしいデス。」
背後の魔物群の更に奥で、壁に隠れながらレンジとアーシャがほくそ笑んだ。
彼は増殖の宝玉でレスト達の前方に、作り出した魔物群をそっくりそのままコピーしたのである。
「これは誠に便利だ。吾輩の能力との相性も最高だ。ガハハハハハ。」
「ケケケ、素晴らしいデスね。それをどこで?」
「お前にはまだ教えん。」
レンジは伏せたが、実際には彼にも分からなかった。魔界ル・ヴェルで発見されたもので、侵攻にあたり魔王から渡された物であったからだ。
実際にはこれは、かつて魔界に向かった冒険者が持っていた物である。それが魔王に渡った経緯は不明であるが、ともあれこ結果としてこれはレンジの元に届いた。
「出所など良いではないか。奴らはこれでどうにもなるまい。」
「やはり戦争は数デス。戦力差ほど覆せないものはないのデス。」
「ガッハッハッハッハ、これで勝ったな。お主と組む必要もなかったのではないか。」
「ケッケッケ、そんな事言ってると足元掬われますデ」
笑みを浮かべていたアーシャとレンジの顔が凍りついた。
気付くと居たはずの魔物達は影も形も無くなっていたからだ。
代わりに神殿の床に、不釣り合いな物達ーー大量の煮物が落ちていた。




