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8-9 迎撃

「あれは、なんですか!?」


 レストの叫びにカリーナが慌てながら答える。


「解析中、解析中。……ありました。あれは、スイーツドラゴンです。」


「それは見ればわかります。」


「物質の組成より、恐らく数百年前から存在しているものと思われます。」


「そんな前からスイーツなんてあるんですの?」


「知りません。あったんでしょう。」


「言ってる場合?」


 カーネリアが疑問を呈し、レストが答え、シェルフが突っ込む。そんな一連の流れを無視してカリーナが続ける。


「年代からの推定、および、使用されている術式が魔法では無く錬金術に近いことから、このドラン山に住み着いた錬金術師が、ナリカ家と名乗る前に作り出した実験体と思われます。」


「わしの先祖!?」


「身の回りの物からドラゴンを生み出すという、私を生み出した魔法のプロトタイプです。それをこの山に放ってからずっと放置されていたようで、それで肉体が腐り果てたものと思われます。」


「そして額のあれは……あれは飴玉ですか。」


 レストが解析眼鏡に映った単語を見てガッカリしたように項垂れた。宝玉かと思っていたが、解析眼鏡はあれが腐った飴玉であると示している。


「それでも肉体は腐ってゾンビに……という事か……なんという事だ。」


「ロッテンスイーツドラゴンとお呼び致しましょう。」


「言ってる場合ですか!?」


 冷静に話し合うマネリカとカーネリアに対してレストが叫んだ。だが叫んだのはレストだけではなかった。


「グィィィィィキィァァァァァァァァッ!!」


 ドラゴンが腐った足で大地を踏みしめながらレスト達の元へと駆け出した。


「危ない!!」


 カリーナがレスト達の前に踏み出ると、チョコレートの牙をその装甲で弾いた。


「ヂョッッッッゴォォォォォォォォ!!」


 肉を食らう事が出来なかった事にロッテンスイーツドラゴンは怒号を上げた。そして、足元の何かに目を向けた。


「あ、な、ななな、なんです、これ。」


 ロールがへたり込みながら言った。すでに彼女以外の集落の人間達は、ロッテンスイーツドラゴンの胃の中へと消え去った。


「こ、こっちに!!」


 ロールがターゲットされた事に気づいたレストは叫んだ。だがロールは彼に背を向けて洞窟の入り口へと向かった。


「ひ、ひぃ、にげ、に」


 だが人の歩みに、腐ったとはいえドラゴンの動きが劣るわけもなく。


 パクン。


 ロールは一飲みにされた。


 満足気にロッテンスイーツドラゴンの口元が歪む。


 腐りきったその口からはダラダラと赤い、鉄のような匂いのジュースが流れ落ちた。


「うげぇ……。」


 シェルフが口元を抑えた。


「迎撃!!迎撃!!」


 カリーナが飛びかかる。金属の爪がドロッドロの腐ったお菓子を切り裂く。


「ギャァァァァァァラ、メェェェェィル!!」


 ダメージを受けたかのように見えたロッテンスイーツドラゴンだが、その肉体……というべきなのか、それは崩れる事なくカリーナの爪を包み込む。


「むぅっ!?これは、効いていないようです!!指示を乞いますご主人様!!」


「む、むむむ、これはどうすべきだ!?と、とりあえず焼いてみろ!!」


 叫ぶマネリカをレストが静止する。


「すすすすすストップです!!こんな閉所で炎を撒き散らしたら酸素が燃えて呼吸が出来なくなります!!」


「では外に出せば良いですか!!了解です!!」


 肯定する間もなくカリーナは力を込めて腐った竜を押し始めた。


「随分奥ですわよ!?ここ!!」


「そうでした。」


 カリーナの力はロッテンスイーツドラゴンよりは強いらしく、腐った菓子竜の肉体が崩れながらも押されていく。だが背後には土の壁。そこから先へ進めて、入り口まで連れていくという行為は時間が掛かるし、菓子竜の反撃でカリーナもダメージこそ受けないが怯みはする。難しいように思えた。


「ならば最短距離を作り出しましょう!!『(つち)(みち)物質変換マテリアル・トランスフォーム』!!」


 レストが手を翳すと、ロッテンスイーツドラゴンの背にあった土が壁となり、やがて一本の(みち)を作り出した。


「そんなのアリ!?」


 シェルフが驚きの声を上げた。


「ノリでやってみました!!自分でもビックリです!!」


 レストが叫んだ。


 そんな二人はお構いなしに、カリーナはこれ幸いと腐った菓子の竜を押し込んでいく。


「おおおおおおおおっ!!」


「ポォォォォォォォォテチィィィィィィィ!!」


 カリーナの咆哮と、腐った菓子竜の気の抜ける咆哮が同時に響き、そして拓かれた道を突き進む。


 やがて二体の竜は崖の中腹に開いた穴から日光の元へと飛び出した。

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