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7-3 上昇

 一瞬の静寂の後、場が一気にざわつき、しばし競売が停止する。


 場に居る人間はカーネリアの声を聞き、気付いた。彼女が"あの"カーネリア・ゼーニッヒである事に。


 二十歳という若さにも関わらず、その手腕でゼーニッヒ商会を安定発展させている手腕を知らない者はこの場には居なかった。


 その彼女が、真っ先に手を上げた。


 人々は確信した。これが本物であると。そして、これがそれだけの価値を有しているのだと。


「20,000,000!!」


 騒然とする場に響き渡る男の声。そしてピンと上がる男の腕。


「25,000,000!」


 別の女性が更に値を釣り上げる。


「30,000,000!!」


「40,000,000!!」


「55,000,000!!」


 次々に手が上がり声が上がり値が上がる。司会は喜び戸惑いながらそれを捌く。


「は、はい55,000,000!!次居ないか!!」



「どうするんですか、青天井ですよ。」


「構いませんわ!!あれは間違いなく良い物、(わたくし)の直感が叫んでおります!!」


 カーネリアの目は咎めるレストを見てはおらず、完全に宝玉の虜になっていた。


「金に糸目はつけません!!今回ばかりは絶対に買いますわ!!」


「ダーメだこりゃ、イッちゃってる。」


 そんなカーネリアの目を覗き込んだシェルフが呆れながら言った。


「まぁ、本物ではありそうですので、無駄な買い物にはならない、とは思いますが。」


「っても55,000,000ガルド「70,000,000!!」70,000,000ガルドでしょ?そんだけの価値あんの?」


 カーネリアの怒声に遮られながらシェルフが言うと、レストは眼鏡のダイヤルをカリカリと回した。


「この眼鏡によると、あれは『精神の宝玉』らしいです。この間の本では『心を狂わせ』なんて言ってましたね。心を狂わせる、つまり操るか崩壊させるか、何れにせよまぁ価値が無いわけではないと思います。」


「……もう能力発動してるとかないわよね?」


「あったら僕達も欲しくて欲しくて堪らなくなってます。」


 レストはカーネリアを解析してから続けた。


「後、眼鏡で見る限り、カーネリアさんは素でコレです。」


「さいですか。」


 シェルフの中でカーネリアの評価が更に下がった。


「んじゃまぁとりあえずは任せときますか。破産しそうになったら気絶させるけどね。」


「そうですね。僕は買えなかった時のために、と。」


 レストは先日作った小さな発信機を、宝玉に向けて投げた。それは宝玉にペタリとくっついた、ように見えた。


 司会は客席から何かが飛んでくるのを見て「虫か?」と思い宝玉を眺めたが、彼の目からは特に変化はないように見えた。


「前回は目に見えるくらいのサイズだったのでバレて外されたようですので、今回は小さくしました。」


「チリにしか見えねー。」


「そういう風に作り直しましたから。」


 流石に何度も取り払われて、というわけにはいかない。


「しかし幾らで買うつも「100,000,000!!」うわぁ。」


 100,000,000ガルドはレストの、没落とはいえ貴族の感覚からしても大金である。庶民であれば一生安泰といえる額である。


「120,000,000!!」


 止まる事のない、あまりに局所的なインフレ。段々シェルフはクラクラしてきた。彼女は仮にも聖職者、金銭感覚は一般的である。レストですら段々と恐怖すら覚える狂気に満ちた金額の上昇線に、彼女は耐えきれなくなってきた。


「どこまで続くのよコレ……。」


「誰かが止めない限り続きますねこれ……。」


 もうそろそろ司会が止めてくれないものかと期待する。だが司会もまた、金額のインフレについていけず、どうしたものかと困惑を覚えているようであった。


 レストはそろそろ止めましょうよと言いたげな目でカーネリアを見た。


「金!!」


 そんな思いを無視するように、カーネリアがレストに向かって叫んだ。

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