7-2 価格
「密林の部族の仮面と聞けば聞こえは良いと言いますか、確かに惹かれる物はありますが、あれはなんというか……ただの子供の工作ではありませんか。」
入場の時のテンションは何処へやら、ローにギアを入れたカーネリアが不満気に言った。
運ばれていったお面は、確かに部族の仮面のようにも見えたが、一方で目の部分から接着剤らしき物がはみ出ていたり、口と目の位置が人間の本来の位置と、意図的とは思えない、ただ雑に作ったからという理由しか感じられない程にズレていた。更に全体的に言葉通り荒削りで、ところどころ尖った部分もある。付けたら最後皮膚を傷つけそうだとレストは思った。
「ああいうのも出品されるのが"裏"と言われる所以なのでしょう。」
レストは冷静に、付けた眼鏡を弄りながら、他の客に聞こえないように言った。
「見極めが大事ってコトね。」
「ええ。ちなみにアレは偽物です。最近作られたのが分かります。」
レストの言葉にカーネリアが溜息を吐いた。
「自作と来ましたか。権謀術数とあのトレイルは申していましたが、確かにその通りなのかもしれませんわね。」
「何も買わない方がいーんじゃなーい?」
「いいえ、素晴らしい物であれば買います。レストさん、私が目配せしたら本物か偽物か鑑定しなさい。」
命令口調なのがレストには気にかかったが、どうも気を張り詰めているのが分かったので反論は控えた。既に目は見開き金色の輝きを称えている。彼はまだカーネリアとは短い付き合いだが、このモードに入ったカーネリアは聞く耳を持たない事を知っていた。
その後出品される胡乱な品々の数々。
部族の槍(ただの物干し竿)、90,000ガルド。
王族のミイラの巻いていた包帯(本物だがカーネリアは興味を示さず)、150,000ガルド。
不死になるとされる沸騰したドラゴンの血(司会者談、実際は沸騰したコモドドラゴンの血)、14,000,000ガルド。
古代の美術家が描いたらしい絵(レスト達の目には落書きにしか見えないが、本物らしい)、50,000,000ガルド。
何れもカーネリアの興味を引くには至らなかった。
最後の絵だけは少しだけ、ほんの少しだけ惹かれる物があったが、そこまで高額では持ち帰るリスクも発生する。20,000,000ガルドまでなら出しても良かったが、ここまで値上がると帰路襲われるか、店頭に並べても売れ残るリスクの方が高いと判断した。
「正解だと思いますよ。あれに50,000,000ガルドはいくら何でも。」
「いえ、あれは本当に50,000,000ガルドの価値はあります。ですが50,000,000ガルドの価値しかないのです。分かります?」
「利益が出ないっつーこと?」
「その通り。元々芸術品とは一部の人間にしか売れないのに、この価格帯では本当に極一部の人間に限られます。無論、良い物であれば青天井、延々と値上がりする事も考えられますが、アレは見たことがあります。幾つか数があり、そして好いている方は極一部の人間の更に極一部。需要が無いのです。」
カーネリアは溜息を吐いた。
「おまけにここまで高額ですと、売る前に警備が必要です。結局高く付きます。」
「なるほど。」
「ああもう、もう少し良いものは出ませんの?」
カーネリアの慟哭をよそに、司会は次の出品物の名を読み上げる。
「次です!!次は本日の目玉!!美しき光に魅入られる者は多く、魅入られた者は自ら命を絶つとも、他の魅入られた者に命を奪われるとも言われる曰くに満ちた蒼き球体。その輝きは呪いかそれともその価値を示す威光か。古より伝わる宝玉です!!5,000,000ガルドから開始致します!!」
「15,000,000!!」
レストが本物と告げるよりも前に、カーネリアが挙手しながら叫んだ。




