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6-8 解明

「ワッ、ワワワッワ、ワタシですか?」


 トレイルが周りを見回し、突き付けられたレストの指が自分を指していることを確認し、困惑しながら言った。


「い、いきなり不躾ではありませんか!?」


「でも貴方以外に実行可能な人はいないので。貴方みたいに、『物質透過(トランスペアレント)』スキルを持っている方は他に居ませんから。」


 そのスキルの名前を聞いた瞬間、トレイルの顔が曇った。


「このスキル、物質を透過させられるようにするスキルですね?貴方はこれを使って、宝玉の下、台座の板を透過出来るようにしたのではありませんか?」


「……。」


 レストの問いかけにトレイルは沈黙を保つ。レストは無視して続ける。


「このスキルを持っているのは御三方の内貴方だけです。他の方は速度向上(スピードアップ)スキル。それだけでは、指紋やその他の痕跡を台座に残さず宝玉を盗む……いや、宝玉をなくすことは出来ないでしょうからね。」


 ネイティとローゼンは自分のスキルが言い当てられた事にギョッとした目を向けたが、あくまでそれが自分の身の潔白を示すためのものであると理解し、一旦この男のーータンテイとやらの話を続けて聞く事にした。


「ショーン氏が聞いたドンという音は、宝玉が台座を透過して床に落ちた時の音です。音が一回だけ、そして篭っているように聞こえたのは、台座の中で発生した音が台座で遮られたから。」


「まままま待ってください、それだけ?スキルがそれというだけで何故ワタシで確定なのですか。ワタシは確かに『物質透過』スキルを持っています。ですがそれだけで?決められても。」


「まぁそれだけだったら僕も断言してません。決定的と言えるのは、貴方の足跡です。」


「……足跡?」


「この部屋の壁と、この部屋に隣接する執務室の壁。そこに貴方の足跡がありました。まさしく壁を通り抜けたような、壁から生えた足跡がね。」


 レストの言葉にトレイルの顔は凍りついた。


「先程貴方はこの部屋に入ったことないと仰いました。では何故壁越しに抜け出るような足跡が残っていたのでしょうか?」


「あー、いや、それは、その。」


「ローゼンさんはこの人が壁をすり抜けた瞬間を見ましたか?」


 レストは吃るトレイルを無視してローゼンに尋ねた。


「見るわけないでしょ。」


「かように仰っています。というかそもそも壁を通り抜けて何をしていたのか。簡単ですよね。」


「あ、う、うう。」


「宝玉を透過させて盗もうとしたのです。ですが台座の床を透過させた結果、宝玉が落ち、音が出て驚いた。ショーン氏もその音で何かが起きたのを悟った。それで回収出来ないまま壁を抜けてこの部屋に戻り、階下からやってきたように見せかけてショーンさんと合流した。そんなところでは?


 そして何より、実行可能なのが三人の内貴方だけだというのが致命的です。


 ローゼンさんは、警備員の方の証言で、「廊下にはネイティさん以外誰もいなかった」というものがあります。廊下に出ずに執務室に向かう方法は魔法かスキルですが、そうした魔法が使われた形跡はーーというか、ローゼンさんの周りに魔法を使った形跡がありません。スキルも『速度向上(スピードアップ)』で、痕跡を残さずに行動するという類の物ではありません。


 ネイティさんも同様です。


 トレイルさん。貴方はどうでしょうか。『物質透過』スキルは間違いなく移動や紛失に役立つスキルです。何より部屋の配置です。


 部屋の配置はこうなっていますね。


  [執務室兼応接室]-[第二応接室]-[客室1(トレイル)]-[客室2(ローゼン)]


 一目瞭然です。仮に壁をすり抜ける方法があったとしても、ローゼンさんはトレイルさんの部屋を通らないと執務室には辿り着けません。トレイルさんだけが執務室に、『物質透過』スキルさえあれば辿り着けるのです。」


 周囲が唖然としてレストを見つめる中、トレイルは言葉もなく、その場に崩れ落ちた。


「すみませぇぇぇぇぇん!!悪気は無かった、無かったんデス!!ただ、その、金が欲しかっただけなんデス!!あれは間違いなく高く売れます!!そう思うとどうにも耐えられなかったのです!!欲しいものがあって!!でもそれは高すぎて!!バカなことをしたと反省しています!!許してくださいぃぃぃぃー!!」


 トレイルは懺悔とも開き直りとも取れる言葉を口にしながらポロポロと涙を流した。


「ま、待って下され!!とすると、その、あまり話についていけておりませんが、物質透過スキルで落としただけとすると、つまり宝玉はーーどこに?」


「あの宝玉のケース、人が立って見られる程高い物ですし、重めの展示品も同じケースで飾られていました。ケース自体相当重いのではないでしょうか?」


「そ、そうですが。」


「だから貴方方は見落としているのです。ケースの中、空洞になっている部分に宝玉が落ちていることに。……ですよね?カーネリアさん。」


 レストが不意にカーネリアの方を見て言った。部屋の全員の視線がカーネリアに注がれる。


「あー、バレてましたか。ええ。その通りですわ。(わたくし)透視(クレアポヤンス)スキルがありますので、先程の部屋で見つけてましたの。台座の中、一段空洞になっている部分に、宝玉らしき物が落ちているのを。」


 レストはニヤニヤとにやけた笑みを浮かべるカーネリアと、物質透過スキルが使われたとしたら宝玉は今どこか、という点から算出していた。その予想は的中した格好となる。


「ネイティ!!行ってきてくれ!!」


「は、はい旦那様!!」


 ネイティは外に出た。警備員を何人か掻き集めているのが、開きっぱなしの扉からレストの耳に届いた。


「……さて、ショーンさん。トレイルさんについてですが。」


「はい。このコレクターの風上にも置けない奴め。騎士団に突き出してとっちめてもらいますぞ!!」


 ショーンは怒りに満ちた鬼のような形相で言った。今までの穏やかな彼の顔とは似ても似つかないものであった。


「ヒィッ!!」


 トレイルが恐怖の顔を浮かべた。レストは「このままだと彼女にはちょっとまずい事になるかもしれない」と思い、口を挟んだ。


「ですが何罪で、でしょうか。」

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