6-6 解析
「バージョンアップ?」
「ええ。これは鑑定眼鏡です。更にこれを解析眼鏡に変化させます。『物質変換』、と。」
レストがショーンに聞こえないようにそう言うと、彼が身につけていた眼鏡の形状が変化した。具体的にはボタンが増加している。
「魔法の解析と個々人のスキルの鑑定の機能を追加しました。上手くいっていれば、これで先程カーネリアさんがおっしゃっていた、部屋で使われた魔法と、個々人の持つスキルの特定が可能になっている……はず、です。」
そう言って彼が眼鏡のボタンをぽちぽちと弄ると、『Magic Mode』とレンズに表示された。
そこには、この部屋、この空間でいつどのような魔法が使用されたかが表示されていた。
「ショーンさん、今日ここで透明化解除の魔法を使われましたね?」
「ええ、もしや透明になっているだけではと思って。……え、何故そんなことが!?」
「探偵ですので。」
馬鹿正直に「道具のお陰です」と言う事も出来たが、少しばかり見栄を張りたくなったレストであった。
「オホォー、すごい……そんな事が魔法も使わずに分かってしまうとは……!!」
「まぁこのくらいは。……ふむ。物質交換の魔法が使われた形跡はありません。透明化の魔法が使われた形跡は……廊下にはありますね。とすると、誰かが唱えた?」
「誰が一体……!?」
ショーンは身を乗り出すようにして聞いた。
「頼みます、タンテイ殿。教えてください、一体誰が!!」
「い、いや、誰が、までは不明です。……ですが、となるとですね。透明になった後に誰かが盗んだ。その方法は魔法では無いし、指紋や手袋の跡が残るような方法ではない。」
レストが期待していたのは、魔法を使われたという形跡が残っている事。そうすれば、それを手掛かりに出来る。魔法は発動に詠唱が必要である。小声で発動する事はできない。つまり声が出る。音が出る。それは明確な手掛かりとなる。ーー魔法の宝玉がない限りは、という条件が付くが。
だが逆に魔法が使われていないという事は。
「……先程騎士団の本部で伺った、疑いが掛けられているという御三方は隣の部屋でしたか。」
「ええ。すぐ横の部屋です。廊下を使わないと行けませんが。」
そう言ってショーンは壁を指さした。
「結構、結構です。ではその人達に……と。」
レストは壁を見て、何かに反応した。
「どうしました?」
「いえ、大した事ではないです。足跡があっただけです。」
「足跡。まぁ捜索にあたり駆け回ったりはしたが。」
「ちょっと特殊なものがありまして。まぁ気になっただけです。行きましょう。……カーネリアさん?」
「何してん、ニヤニヤして。」
ショーンに連れられて部屋を出ようとしたレストとシェルフであったが、何やら空のケースの下側を見てニヤニヤと笑みを浮かべているカーネリアが目に留まった。
「ん?ああ。なんでもありませんわ。」
そう言って彼女は三人に続いて部屋を後にした。
「なーんかさ。」
部屋を出た後シェルフが言った。
「アタシだけなんも分かってないみたいで気分わりぃんだけど。」
「すみません。僕の方はもう少ししたら説明しますから。……カーネリアさんが何に気づいたのかは分かりませんが。」
「シシシシシ、いやあ、ケースの下って空いた空間になってるんだなぁというだけですわ。」
絶対にそれだけではないのだろうと言うことは、そのニタニタとした笑みで容易に理解出来た。
「……ああ、ふむ。」
レストは察したようであったが、シェルフは理解出来なかった。
「むー。」
頬を膨らませてシェルフは暗黙の文句を述べた。少しだけ、可愛い、などという単語がレストの頭をよぎった。
「まぁ、まぁ。多分、隣の部屋に行けば分かりますよ。」
そう言ってレストは、膨れ面をするシェルフの背中を押しながら、隣の第二応接室へと向かった。




