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6-4 請負

「宝玉……。」


 早速また手掛かりが得られそうであることに、レストは運の巡り合わせというものを信じかけていた。


 失ったはずのものが戻ってくれば当然そうもなろう。彼は自分を擁護した。


 だが運を天に任せたままではいけない。自分の道は自分で切り開くのだと彼は決めていた。


 その道を切り開くためにも、この件は自分が関わらなければならないと意志を固めた。


 それは他の二人、カーネリアとシェルフも同様であった。


「はい。先程も申し上げた通り、詳しくは分かりませんがな。調べようにも手元に無くなってしまいましたからなぁ。オホォーッホッホッ……いや笑い事ではない。ともかく、こうした事態にはどうすべきか分からんのです。タンテイさんはここ数日で数々の事件を解決されたとレヴィさんからお聞きしております。是非力を貸して頂きたい。」


「私からもお願いします。大臣の家に盗賊が入り込むなど、騎士団として見過ごすわけには参りません。……ですが、私共としてもどう手をつければ良いか分からないのです。人手も足りず、アレイトス教の捜査も進めねばなりません。とにもかくにも手が回らないのです。」


 レヴィは肩を落としながら言った。


「斯様な依頼は、騎士団としても本当に申し訳ないのですが。」


「いえ、僕としても少々興味があります。」


 これは建前ではなく、彼の本音であった。


 勿論宝玉も気になるところではあった。だがそれと同等に、ショーンの語った不思議な体験、誰も居ないはずの部屋から無くなった宝玉という話が引っかかった。自分に解けるかどうかはともかく、見てみたい。そんな思いが沸々と湧き出していた。


「僕でお役に立てるのであれば、是非。」


「おおっ、ありがたい。私もどうすれば良いか困り果てていたところ。助かりますぞ。」


「早速ですがお聞きしたい。宝玉が無くなった後どうされました。」


「部屋を出ました。誰か盗人が入り込んだのかと思いまして。すると、執事のネイティが居りました。彼には飲み物を用意して欲しいと依頼しており、その飲み物を持ってくる最中でした。


 私の顔を見て何事かと思い驚いた様子でした。話を聞くと飲み物を落とし顔が真っ青になりました。突然物が無くなるなど有り得ないことです。ネイティと、部屋の警備をしていた者に尋ねましたが、誰も部屋からは出ていないとのこと。私が最初だと言うのです。


 すると、騒ぎを聞きつけたのか、廊下を、コレクターとして私のコレクションを見たいと言って来て下さったトレイル氏と、私の部下として書類を取りに来たローゼンが来ました。二人は客室ーー私の部屋の隣の隣にある部屋から出てきました。


 二人に「部屋から出たか」と聞くと首を横に振ります。それについては警備員も受け合いました。確かに廊下を通ったのはネイティだけだと言うことです。


 では誰がやったのか?


 当然ですが、私は自分の屋敷の人間を疑ったりなどしたくはありません。ですがこの場合は仕方ありません。他の人間も呼び寄せて尋ねましたが、殆どが誰かと一緒に居たと言います。


 一人で居たのは、偶然か必然か、ネイティとトレイル氏、そしてローゼンの三人だけでした。


 となるとこの三人だけと考えられます。ーーネイティを疑いたくはありませんでした。それもあって、トレイル氏とローゼンには隣の、第二応接室に居てもらうことにし、ネイティには彼女らを監視してもらうことにしました。実質的に三人を同じ部屋に隔離したという形ですな。


 それで、後は家探しです。ですがてんで見つかりません。ケースを開けても無い。近くの部屋を探しても無い。頭を抱えましたよ、全く。それでどうしたものかと考えーー後は先程お話しした通りです。」


「なるほど。部屋の位置取りはこんな感じですか?」


 レストは紙に図を書いた。


 [執務室兼応接室]-[第二応接室]-[客室1]-[客室2]

 ------------------廊下---------------------


「ええ。」


「ベランダなどは?」


「ありません。」


「トレイルさんとローゼンさん、ですか。その二人はどっちに?」


「トレイル氏は客室1、ローゼンは客室2に居てもらっていました。」


「第二応接室は空き部屋ですか?」


「机が幾つかあるくらいですな。最近使ってません。」


「その事はその三人もご存知で?」


「多分、知っていると思います。トレイル氏は何度か訪問して下さっていますし、ローゼンもよく仕事を取りに来ています。その度に第二応接室の前を通りますから、話題に出る事はあったと思います。」


「ふむ。……分かりました。後は現地に行って調べてみましょう」


「おお、ありがとうございます!!」


「では(わたくし)も同行致しましょう。」


 最初に言い出したのはカーネリアであった。


「労働の監督の為にも。」


「どういう意味ですかそれ。」


「貴方の時給計算をして差し上げます、ということですわ。ああショーンさんはご心配なさらず。対価は騎士団に請求致しますので。」


 えっ、という顔をしてレヴィは固まった。いらんお世話だとレストは心底思った。


「それに、ショーンさんの他のコレクションが無事かどうか、私も気になりますので。卸した身としましては。」


「ああ、あなたはぜーニッヒ家の。あなたが見てくれれば間違いない!!是非来てくだされ!!」


「んじゃアタシは、警護ってことで。」


 シェルフがお気に入りの長物を抱えながら言った。


「……もう、アンタには、傷ついて欲しく無いし。」


 小声でボソリと呟いたその言葉は、レストには聞こえないように、そっと宙空へと放たれた。


「心強いです。では行きましょう。」


 その音の響きは、シェルフの期待通りなのか、それとも本心に反してなのか、レストの耳に届くことはなかった。


「……ん。」


 複雑な心境のまま、シェルフはレスト、そしてカーネリアの横について、ショーン・コレックとその警備を担当する冒険者の後をついていった。


「よろしくお願いしますねー!!」


 レヴィはそう言って彼らを見送った後、自分の部屋に残された仕事の山に意識を戻し、


「……ああ同行したい。こんなことのために騎士団に入ったわけではないのに……。」


 そう嘆きながら、仕事へと戻っていった。心の中に燃えたぎる正義の心、人を救うという心に、どうどうと御する声をかけながら。

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