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6-3 説明

「本題に入る前に、私の自己紹介をせねばならないでしょうな。オホォーン、私はショーン・コレック。貴族をやっとります。私の名前はともかく、姓の方はご存知でしょうな。」


 レストは頷いた。ウィーラー家とはあまり関わりは無かったが、確かに貴族の家名にコレック家というのがあったのを覚えていた。


「確か、主に内政の方を担当される家系とお聞きした覚えがありますが。」


「オホォー、よくご存知ですな。流石タンテイさん。」


 ショーンは満足気に首を縦に振った。どういう紹介をしたのだろうか、とレストはレヴィの方をチラと見た。レヴィはニコニコと笑みを浮かべている。その笑みに悪意は全く無い。多分、「タンテイのピースフルさんという方がいまして」くらいの説明だろうか。


 まぁ気にしても仕方ないだろう、と彼は自己完結した。変な扱いなら勿論訂正せねばならない。だがそうでないなら、そこまで目くじらを立てる問題でもない。


 そんなレストの様子や心内における葛藤を無視して、ショーンは続けた。


「左様、私は内政、特に財務を担当しとります。自慢ではありませんが、我が国の財政は頭の中に入っとります。今の所は順調です。」


 カーネリアの目が金色に輝いた。


「ちょっと。」


 レストが嗜めるとカーネリアはシュンと肩を落とした。


「失礼しました。続けて下さい。」


 そういうと、ショーンはつらつらと身の丈話を語り始めた。



「うむ。でですな、……どこから説明すべきでしょうか。とりあえずは、やはり、先程レヴィ殿にもお話しした部分から再度ご説明した方がよろしいでしょうな。


 先程も申した通り、私は財務の仕事をしておりますが、この国の大臣室というのは狭苦しいもので、なかなか仕事も捗らないというものです。そうした理由から、私は普段家で仕事しております。


 仕事は結構大変です。昼夜問わず様々な計算を行う事も多く、また、いくらやっても終わらない書類整理などで毎日それはそれは苦労しておりますが、まぁ貴族として生きる以上、他の民の為、国の為に働く事は義務ですからな、それは受け入れねばなりますまいという所でしょうな。


 オホォーン、話が少し逸れましたが、私はそういうわけで、色々と自室で作業をしているわけなのですが、昨晩に限って変な事がありまして。


 具体的に申しますと、昨日の事。夜遅く、計算でパチパチと石を弾いていた時の事です。書斎で作業をしている時に、ドン、とこう、何か重い物が落ちるような音がしたのですわ。


 普通ではそのようなことはありません。勿論風か何かで物が落ちただけかとも思いました。書斎の外であれば執事達が歩いているだけとも取れるのですが、明らかにそれは部屋の中からしたように感じられたのです。不気味だとは思いませんか。……タンテイさん以外は大して気にしていないようですな。


 失礼。話を続けましょう。


 音がすると当然気になるというもの。私は立ち上がり、部屋の中を見回しました。


 自分で言うのもなんですが、相当広い部屋です。この部屋の三倍はあるでしょう。大広間と言っても差し支えない程には広い部屋で、見落としもあったかもしれませんが、パッと見た限り、特に異常はないように見えました。少なくとも、誰も居なかったのは間違いありません。ですが、違和感があったのです。


 ――私の部屋が広いのには理由があります。私はここで来客を迎えたりするのです。来客を迎えるに当たり、必要となるのは持て成す為の物と、タンテイさん、あと一つ何か分かりますか。


 ――そう、仰る通り。威厳を示す為の物、有り体に言えば宝物とでも言いましょうか。芸術品、希少品。そうしたステータスとなりうる物を持っているという事が重要です。私の部屋にはそうしたものが展示してあります。無論、盗まれないようにケースに閉まって飾ってあります。人の高さくらいはあるケースです。少々搬入には骨を折りましたがな。


 話が逸れました。違和感を覚えたのはそのケースに対してでした。何かおかしい。あるべき物がない。直感でそう思いました。それで机を後にして近寄ると、ケースの中にあるはずの展示品の一つが無くなっていたのです。


 それが昨夜の晩の事。泥棒の仕業と判断して家の中を徹底的に捜索したのですが、展示品は勿論の事、泥棒の痕跡一つ見つからず、まんまと盗まれてしまったようなのです。


 不思議な事というのは痕跡が見つからない点です。その晩から今朝方にかけて徹夜で調査をしたのですが、家に近寄った者も居なければ、出ていった者も居ない。そして家の者は誰も展示品を持っていない。


 私は途方に暮れました。無くなった物はよりによって家宝、一番大切な物でした。それを無くすというのは私の死んだ両親にも祖先にも顔向け出来ないという物です。


 それで騎士団に調査を依頼しに来たのです。貴族として、自分の失態を他者に話すのは恥ずべき事ではありますが、今回ばかりはそうも言ってられないもので。


 そうしましたら、タンテイであるピースフルさんがそうした事件に強いとお聞きして、この度説明させて頂いたわけですな。


 ……ところで、何故私の顔をじっと見つめているのです?怖い顔して。何か気に食わない話でもしてしまいましたかな?


 え、家宝?


 ああ、家宝はその、宝玉と呼ばれるものです。」

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