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5-7 襲撃

 突然その刃が静止した。


 レストは振り向き、見た。暗殺者の視線が、倒れた自分では無く、もっと上の――先の――入り口の先へと向けられている事に。


 最初それはシェルフに向けられたものかと思い焦りを覚えたが、そうでは無いことにすぐに気付いた。


 音がしていた。


 入り口の先から、何かが駆けてくる音が。


退去(たいきょすべき)騎士団長、来(きしだんちょうがきた)。」


 暗殺者が叫ぶと、祭壇近くのローブの者達の体が強ばるのが見て取れた。


「侵入者が連れてきたのか?」


 灰色のローブの男は冷静に言った。


「ニャ、ハハ、笑えないわねぇ。逃げるにしても、呼び出した事には罰を与えないとねぇ。シア、そいつ殺しておきなさいよ。」


 青いローブの女が、


勿論(もちろんそのつもりだ)。」


 そう答えると、一瞬止まった彼女の体が再び動き出した。レストの心臓に向けて真っ直ぐ短刀が振り下ろされんとした瞬間、カン、という乾いた音とともに、何かがそれを弾いた。


 暗殺者のローブに隠された顔が僅かに歪むのが見えた。苛立たしいという感情が表れていた。


「またか……!!」


 感情が昂ぶった故なのか、先程までの口調が崩れ、普通の喋り方になった。


 レストに振り下ろされんとしていた短刀を弾いたのは、先程のゼーニッヒ商会での彼是同様、シェルフの折りたたみ金属棒であった。


「貴様ァ!!」


 ステルスマントを外したシェルフの姿を認めると、暗殺者、青いローブの女、シアと呼ばれた女は激昂した。そして、シェルフに対し飛びかかり、短刀を振り下したが、その攻撃は別の人間により阻止された。


 巨大な盾によって。


「!!」


 それが誰かを理解して、シアは一歩退いた。


「に、……退却、推奨たいきゃくをすいしょうする。」


 苦々しくシアが言葉を紡ぐと、祭壇の周囲に居た他の面々は、言葉も無く立ち上がった。逃げる準備のようであった。


「待ちなさい!!」


 騎士団長、レヴィ・トゥイーナが盾を振り翳しながら叫んだ。


「悪しき邪教の信奉者には正義の鉄槌を下します!!『信仰の光よ闇を照らせ!!聖光(ホーリー・ライト)!!』」


 巨大な盾の持ち主が『聖光(ホーリー・ライト)』の魔法を唱えると、巨大な盾が輝き、白い光の線を放った。


 光が、洞窟の中を明るく照らすと共に、洞窟内に白い炎を巻き起こした。


(あつっ)。」


 シアのローブがその光で焼けた。だが咄嗟に避けたせいで、肉体までは灼かれない。


「退け!!」


 シアは飛び退き、橙のローブの男と共に洞窟の奥へと消え去った。


 他の面々も、レストの目では追うことが出来ない速度で去っていった。


 祭壇の上に掲げられたアレイトス教の紋章だけが焼け焦げ、そしてガシャンと祭壇へと落ちた。




「しくじりましたか。」


 シェルフの前に立ち、巨大な盾で彼女を守っていた、騎士団長レヴィ・トゥイーナが悔しそうに臍を噛んだ。


「大丈夫ですか!?」


 レヴィが血が流れるのを見て言った。


「う、うう、た、多分……。むちゃくちゃ痛いですが。」


 レストはマントを外し、姿を現しながら言った。


「はいはいはい、(わたくし)の出番ですわね。『治癒の光よ彼の者に活力を、治癒の光(ヒール・ライト)』。」


 カーネリアが暗闇の中から顔を出し、そしてレストに向けて手を上げ、詠唱の後魔法を放った。


 手のひらから溢れ出した緑の光が、レストの体を優しく包み込む。その光は傷口に集中し、激しく輝くと、カランという音を立ててナイフが背中から地面に落下した。傷口は塞がり、出血も停止した。


「う、ぐ、……ふぅ。」


 レストは一気にその肉体から痛みが消えていく事に安堵していた。


「もう大丈夫、みたいで……あれ。」


 立ち上がろうとした瞬間、足が縺れて倒れた。


 安心した事もあるだろうが、血を流しすぎたのもあるのだろう。酷く目眩がしていた。


「れ、レヴィさん、カーネリアさん、ありがとう、ございます。」


「こちらこそ御礼を。貴方のお陰でこのような場所があった事を見つける事が出来ました。……しかし、申し訳ありません。取り逃がしてしまいました。」


 レヴィが頭を下げた。


「ほ、宝玉も、ですか。」


 レストはそう尋ねながら祭壇の上を見た。


 三つあった宝玉は何れも無くなっていた。本もまた同様に。


 追跡機を見ると、光の点は移動する事なく、祭壇の方向で止まっている。


「……残念。」


 意図的か、或いは偶然か。発信機は外れてしまったようであった。


「お、おわな、い、と。」


 ヨロヨロと立ち上がろうとしたレストを、シェルフが押さえつけた。


「何いってんの。アンタはちゃんと休みな。」


「シェルフさんの仰る通りです。ここは私に任せて下さい。」


 レヴィはそう言うと、ローブの者達を追って洞窟の奥へと駆けていった。


「傷は完璧に治しましたが、出血した分の血液に関してはどうにもなりませんわ。当面は大人しくしていた方がよろしいかと。……しかし、全く無事で何よりでした。」


 カーネリアはしゃがみ込んで、レストに顔を近づけながら言った。


「殺されでもしたらどうするつもりでしたの。」


「あはは……、すみません。」


 するとシェルフが割り込んで、レストの頬に唇をあてがった。


「んなっ……?!」


 カーネリアが絶句した。


「     」


 レストも絶句した。


「お礼。助けてくれた、ね。あんがと。」


 シェルフは微笑むと、レストの肩を持って立ち上がった。


「さ、アタシ達は出るわよ。」


「ちょっ、ちょっと今のはどういう事ですの!!」


 レストはシェルフに連れられて、入り口へと向かう。


 それに続いてカーネリアが真っ赤になりながらウダウダと何かを喚きながら着いていった。


 レストは頬に残る温かな感触が忘れられず、言葉を失ったまま帰路に着いた。

5話はここまでとなります。

お付き合い頂きありがとうございました!!

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