5-6 発見
「…………。」
と、黒いローブの女が、辺りを見渡し始めた。
レストの心臓が激しく脈打ち始めた。
もしかすると、バレているのか。いや、そんなはずはない、とレストは自分に言い聞かせた。だが。
「どうした。」
橙のローブの女が言うと、黒いローブの女は人差し指を立てて口元に当てた。
「誰気配有。静。」
「!!」
ローブを着た者達全員の表情が一気に強ばり、そして辺りが一気に静寂に包まれた。
まずい。バレたのか。
レストの額に汗が流れた。
このマントは音も声も姿も消しているはずなのだが、それが効果を発揮していないのか。いや、同じように焦っているシェルフのシルエットは見えるが、音も何もしない。どうやら相手の――黒いローブの女の勘が鋭いのかもしれない。
この場に留まるべきではない、そう本能が叫んでいる。
こういう場合はどうするべきだろうか。レストはほんの少しだけ悩み、そして結論に至った。
本能が叫んでいる時はそれに従うべきだ、と。
レストは走り出した。洞窟の入り口へ、自分達の通ってきた道へ。シェルフに腕を振り、続くように示す。それを認めたシェルフは、続いて入り口へと戻っていく。
だが鋭い眼光が、視線がレストの背中に突き刺さり、歩みを止めた。
振り返ると、目が会った気がした。黒いローブの女とである。
レストは悟った。気付かれた、と。
何が原因なのかは良く分からない。だが、バレているのは間違いない。
一度レストは停止し、シェルフを先に行かせた。嫌な予感がした。
その嫌な予感が的中し、何かあった時のために、せめて盾になろうとした。
その予想、用意は適切であった。
シェルフが先に向かったのを認めてから走り出したところで、ザクッ、という音がして、レストの背中に激痛が走った。
シェルフがハッとなって立ち止まった。
レストの背中には飛来した短剣が突き刺さっていた。
「居。処理。」
そう言って黒いローブの女は跳躍し、レストの足元へと一瞬で距離を詰めてきた。
暗い洞窟の中、心もとない松明の炎が、レストの足元に赤い血が流れているのを照らしていた。
これで居場所が分かる。分かってしまう。
レストは痛みで動けなかった。背中の、内蔵などには特に刺さっていないと思うが、それでも肉を貫かれた事で激痛が走っていた。
そこに暗殺者の女が到着した事で痛みよりも別の感情が去来していた。
「自分はここで死ぬのか」そんな確信にも似た恐怖が、彼の心の中を支配していた。
そして、女が、もう一本の短刀を取り出し、赤い血の流出元へ向けて振り下ろし――




