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4-8 発見

 レストは心臓の鼓動が高鳴るのを感じていた。


 マズい。


 今の流れは大変にマズい。


 犯人がデューレスなのは間違いないと思われる。


 だがどうやって指摘したものか。


 必要な物が何かはわかっている。証拠である。明白な証拠。


 だが凶器もローブも何も見つかっていない以上、それを見つけ出すには時間と労力と権利と、各種様々な物が必要になる。


 そして今このデューレスを逃せば、証拠の隠滅に走られる可能性もある。


 何より――。


 ――もう、後はあの人に任せるしかない。時間を稼ぐことに集中しよう。レストはそう自分に言い聞かせながら、腹を括り、デューレスの話を聞くことにした。


「ほう。スオードさんが死んでいた。で貴方はどうされました。スオードさんの家の扉に貴方の指紋はありませんでした。扉に触らずにどうやって?」


「怖くなって逃げ出しました。開け放したまま出たのですが、誰かが閉めたんでしょう。もしかすると、真犯人かも。」


 些かの戸惑いもなく、平然と彼は答えた。


「騎士団に言ったりはしなかったん?」


「怖くて。なんであんな事になっているのは全く分からなかったので、その日は早々に帰って寝ました。夢であってほしいと思って。――でも、でも、夢ではなかった……。」


 デューレスは鼻をすする音を立てた。だが、瞳に輝く水滴が浮かんだりということはなかった。


「そもそも手紙だけで、その、私が殺したという直接的な証拠は無いではありませんか。あるんですか?あるなら見せてくださいよ。」


 逆にデューレスが詰め寄ってきた。


「……。」


 シェルフがレストの方を見ると、険しい顔をしていた。大丈夫なのか、と声をかけようとした時、その顔が綻んだ。


「あります。」


「へ?」


 そう言ってレストはデューレスの背後を指差した。


「はい。」


 そこには、いつの間にか部屋に入り込んでいた、カーネリアが居た。彼女は手に何か布と刃物を持っている。


「それ、そ、それは!!」


「貴方の荷物の中で発見致しました。ああご心配なく。荒らしたりはしておりませんから。鍵は開けましたが。」


 デューレスの視界には、勝ち誇ったように仁王立ちしながら、黒ずんだ布とナイフを掲げる爆乳の痴女と、そしてその奥に鍵の掛かったはずの箱が開いているのが入った。そしてその視界は歪み、思考が狂い始めた。足が、手が、唇がガクガクと震え、眼球が左右上下ランダムに方向を転換し続けた。




 少し前に遡る。


 カーネリア達はデューレスとの面会前に会話をしていた。


「紋章を見せて反応があったら、部屋の中を透視(クレヤポヤンス)してみて貰えますか?」


「別に構いませんが。何か探せという事ですの?」


「ええ。デューレスさんがもし犯人だとすると、かなり神経質で心配性だという話でしたよね。とすると、証拠となる凶器、つまりナイフなどの短刀、それと血のついた服を自分で隠しているんじゃないでしょうか。」


「そんなことする奴いる?」


「普通いないと思いますが、周辺で聞き回ったり探したりしても見つかりませんでしたし、周辺の住民の方もそうしたものを見た事がない。穴を掘った形跡もありませんでした。」


 レストはカーネリアとシェルフがギルドへ聞き込みに行っている間に、そのような調査を行っていた。


 ここに来るまでの間、道をまじまじと見つめていたりしたのもこのためであった。


「近くに川もありませんから。燃やした、という事も考えられますが、ナイフなんかは燃やすわけにもいかない。それに、心理的な事を考えると、心配性であれば、どこかに捨てて誰かに見つかっても怖い。となると、自宅に仕舞い込むのが一番安心――と考える可能性はあるかな、と。」


 レストは、体重と命を預けるには心許ないロープの上で綱渡りをしている気分であった。


 だが、かつて居た世界で行うような本格的科学捜査や大規模な捜索作業が行えない以上、出来る事をするしかない。


 それに違っていたら別の方法を模索すれば良い。


「ふむ。まぁ可能性がないわけではないですね。」


「紋章に見覚えがあるようなら、犯人の可能性が結構高くなると思うんです。ただの信徒かもしれませんけど。」


「それで透視ですか、よろしい、請負いましょう。そして見つかったらそれを押収して、証拠として突き出す、と。」


「そうです。お願いします。」


「でもさー、箱ん中とかに仕舞われてたらどーすんの。」


「これを。」


 レストは手元の(かみ)(かぎ)に変えた。


「僕の想像力がちゃんと働いていて、それが反映されていれば、これでどんな鍵も開けられる、……はず、です。」


「この間の扉みたいに、ですか。分かりましたわ。」


「そのスキルマジで便利ね。使わないようにしてる理由も分かるわ。」


 シェルフが感心しながら言った。


「絶対、他人には教えないでくださいよ。」


 レストの依頼に、二人は真面目な顔で首を縦に振った。




 そして今。


 会話の途中離れたカーネリアは、スキルで箱の中に血のついた服とナイフを見つけ、窓から侵入。


 鍵を使って箱を開け、それをデューレスに突きつけたのであった。

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