12-4 波瀾万丈
数日後。
「ああいい事ないかねえ。……あ、5ガルド。」
レンジは顔を隠して歩きながら、落ちているコインを拾った。
「ないデスねぇ。」
アーシャもまた顔を隠しながら言った。
「せっかくちゃんと協力してやったのに、罪は償えとはまぁ何たる仕打ちか。ここの連中は本当に恩と言う物を知らんのか。」
「全くデスよ。」
「お主は何もしとらんだろうが。」
「ほー、じゃあこの肉は要らないデスね?」
アーシャはカバンからほかほかの肉を取り出した。これは彼女のポケットマネーで購入したものである。
「……アーシャ様には敵いませんわぁ〜全くぅ〜流石は大商人様ぁ〜。」
「全く。まぁこんな風に調子に乗るからお互いロクな目に遭わないのデスかね。」
「分かってるなら何とかすべきでは?」
「お互いと言っているデスよね。アンタも直すんですよ!!」
アーシャとレンジはそんな事を言いながら、ほとぼりが冷めるまで隣の国に逃げる事にした。
「何か見つけて再起してやる。絶対にだ。そして吾輩が魔王となるのだ!!」
アーシャは正直無理なんじゃないかと思いつつ、かと言って自分も誰かについて行かないと捕まって終わりな気がして、彼に着いていく事にした。
二人の先行きは不安定ではあったが、それでも二人はのんびりと行く事にした。不思議な事に、騎士団の手も全く回ってこない。このまま他国に行けば助かるだろうとたかを括っていた。
実際の所は、騎士団の手が足りず、この二人は大きな事件は起こせないだろうし、万一何かやらかせばすぐ捕まるだろうという意図があっての事だったが、二人はそんな事とは知らず、自分たちの隠れ方の見事さなどを語り合いながら、とぼとぼと逃走の道を歩んでいた。
ある意味平穏な日々であった。
一方。
「いやまあ、うーん。」
レヴィは悩んでいた。アレイトス教の後始末の書類がわんさかの机で、頬杖ついて唸っていた。
「確かに、確かにですよ。この人が敵に回っていたらレストさんは死んでましたし、ある種の不都合が生じていた事は間違いありませんけれど。……何のお咎めも無しというのは不味いので、その、裁判出てくれませんかね。」
彼女はレストに抱きついて離れないシアに言った。
「嫌。苛。」
「それが罪と罰という奴ですから。ちゃんと出てくださいよ。」
シアは裁判となると逃げて出廷していなかった。
この世界では、出廷しないと裁判は流れるだけで、判決が決まったりはしない。そのせいで、ずっと逃げ続けると延々と罪から逃れられるという構図が出来ていた。無論、時効などもないので、本当に延々と逃げ続ける必要があるが。なお、それが騎士団の仕事として重くのしかかっている事も確かであった。
「出た方がいいです。ちゃんと自分のした事には向き合いましょう。その方が僕は好きですよ。」
レストが言うと、シアは頬を赤らめながら、彼の目を上目遣いで見ながら言った。
「……出。」
なお、彼女には"その方が"は聞こえなかった。最後の言葉だけが延々と頭の中でリピートされていた。
「しかしま、これで!!邪教ともお別れ。私の家宝はこの奇跡を生むために使ったという事にすればよろしい。これで大手を振ってゼーニッヒ商会の後継としてやっていけるというものです。」
カーネリアは胸を張った。彼女は改めて父母の死を公開し、自分が商会の会長に就任すると宣言した。
「これでレストさんもウチでゆっくり出来ますわね。」
「……え?」
シアに抱きつかれてあまり聞いてなかったレストがキョトンとした目で言った。
「そりゃー困るね。ねぇ?」
シェルフがレストを介してシアと対称の位置に立つと、シアのように腕を絡ませて言った。
「アタシはまぁ、弔いも出来たし、修道院に戻ろうかと思ってるんだけど、アンタもどう?」
「断らせる気ないですよね、この引っ張り方。」
レストの腕はぐいぐいと彼女の強い力で引かれていた。
レヴィはその姿を見て、心の中で思わず毒付いた。イチャイチャしやがって、と。
ーー彼女は悲しいかな、未だ男性との恋愛経験がゼロであった。
「他所でやってもらってもいいですかね……?シアさんはここに残ってもらって。」
「ではウチで。」
不平を漏らすシアを退かすと、今度はカーネリアが彼の腕を掴んだ。
「いやいやウチで。」
「いやいやいや。」
「狡。私参加。」
カーネリアとシェルフ、シアがレストの体や服を引っ張る。
「もういいですから外でやってくれます!?」
「いややらないでくださいよ!!」
レヴィとレストが叫んだ。
どうやら彼の平穏はまだ当面訪れないようであった。
だがそれでも、彼の心は少しばかり晴れやかであった。最初、追放された時よりも、ずっと。
本作、これにて一旦の完結となります。
ここまでのお付き合いありがとうございました!!
また次回作でお会い致しましょう!!
是非評価・レビューなどいただければ参考にさせていただきます!!




