仮面の中
仮面を採用した人は、視界悪いって思わなかったのかな。
人外――。
それがあの鎧のような、スーツのようなものの名称。
人の外。つまり、人ではないということ。
どんっ、と身体が左に揺れた。
蹴られたのだ、イロさんに。
すると僕が今まで呆けていた場所が、また炎に包まれる。本当に突然に。
不細工に地面に転がりながらも、すぐさま顔をあげる。
「不思議だろう。人外は超常的な、それこそ神と見まごうような神力を有する。まぁ、その代償を支払う必要があるんだけどね」
そう言って、イロさんはまたもや真紅の鎧――人外に攻撃を駆けて行った。鎧とイロさんは何度か攻防を繰り返しながら、二人は傍にあった田んぼへと入って行く。しかし見事に真紅の鎧の重々しい攻撃はイロさんに当たらない。その拳は振るう度に炎波を発し、周囲を真紅の炎に染め上げていく。一発でも当たれば、イロさんの華奢な身体なんかはじけ飛んでしまいそうだ。
一方でイロさんの刀は着実に真紅の鎧にヒットしている。ここからでは遠くて効いているのかどうか見えないが、真紅の鎧は酷く苦しそうだ。
そして真紅の鎧が殴りかかった腕を、イロさんは身を回転させつつ絡め取り、そしてその一回りは大きい真紅の鎧の身体を、背負い投げでうつ伏せに地面に投げつけた。田んぼに張られた水が、激しく跳ねる。
「ぐっ」
真紅の鎧からうめき声が漏れる。やはりその声から男だと推測できる。
イロさんはすぐにその真紅の鎧の背中に馬乗りになって、それを拘束した。そして余計なことをするなと言わんばかりに刀を首元に押しつける。息ひとつ乱していなのが恐ろしい。人の外であるその化け物をも圧倒するあなたはなんなのか。
「一目瞭然だろう。君が妄想だと笑い飛ばす摩訶不思議は、確かに存在する。この兵器のような存在が、君たちの当たり前の日常のすぐ隣にいて、こうしてどこかで暴れている」
「イロさんは、それを退治していたんですか?」
「そんなところだね」
「じゃあ。これまでの連続殺人はやっぱりイロさんが……」
「それは、こいつに聞いてみればいい」
イロさんが、真紅の鎧の首元に当てた刀に力を入れ、その顔を無理やり上げさせる。
「これが君が見たがった異世界だ」
イロさんは真紅の鎧の首元に押しあてた刀に、再度力を込める。
一瞬首を切り落とすのかと身構えたが、イロさんはまるで蟹の甲羅を剥ぐように刀を鎧の隙間に忍び込ませ、そしてその鎧の顔を力いっぱい剥ぎ取った。
そしてその真紅の鎧の奥から現れたものは。
現れた僕と同じ肌を持つ、その人間は。
その人間の、顔は。
「え……?」
「だから、来ない方がいいと助言したんだ」
どうしてですか。
大山先輩。




