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今まで、普通だと思っていたことが、違うことだと知ったとき、結構辛い。
それは…僕の経験によるものだけど。
僕には、人の吐く嘘が聞こえない。
全てノイズみたいな音として聞こえる。
…そのノイズが、嘘を吐いてるときに鳴っている事に、最近ようやく気がついた。
小さな頃から、人の話の合間合間に、変なノイズが混じっていた。
僕はそれを当たり前だと思っていたし…周りは耳が悪いんだな。と認識していた。
それが他の人にとっての当り前ではないと知ったのは…中学校三年生になってから。
きっかけは…些細なことだったけど。
他人との会話で聞こえるノイズが…その頃から急に増えだした。
だから、僕はある時…聞いてみた。
「何か変な音聞こえないかな?…ザザザって、テレビの砂嵐みたいな」
「ん?…そんな音聞こえないけど?」
「本当?結構大きな音なんだけど…」
「んー、大丈夫?」
そんな些細な会話だったけど…そのときの友達の顔で気がついた。
ああ、これは異常なんだって。
それ以来、誰にもこのノイズの話はしていない。
また、その時から…人というものが嫌いになってしまった。
正確にいえば…その時からではなく、もっと後かもしれない。
正直なところ、よく覚えていないけど。
それから、そのせいなのか…よく分からないけれども僕は彼女がずっといない。
告白されたことは何度かあったけれど…告白の時にすらノイズが聞こえるのだ。
あえて例をあげるのならば…。
「好きです…付き合ってくれませんか…?私…先輩のこと"ザザザ"好きだったんです」
相手がどんなに可愛い子でも、どんなに優しそうな子でも…ノイズが聞こえた瞬間に冷めてしまう。
だから…ずっと断り続けた。
そうすると、人間なんて勝手なもので…まあ、僕も含めてだけど。
高校に入ってからは、冷たいやつ…という評価を受け続けている。
まあ、小さな地元の高校だから…知ってる人がほとんど、と言うこともあったのだけれど。
そして、何より悲しかったのが…転校する事になった時だ。
父の都合で、東京の学校に転校することになり、高校の友達に別れの挨拶をした時。
「そっか…"ザザザザ"なるな…俺絶対"ザザザザ"すよ」
「いつまでも私たち"ザザザ"ちでいようね」
そんなふうに…最後の最後まで…友達の言葉にノイズが混ざるのが…ひどく悲しかった。
新しい高校では…いい友達を作れるといいなあ。