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 初日から挫折するところであった。


 昨年は忙しく、年末に差し掛かっても年末感などは皆無であったが、紅白歌合戦を見終え、ゆく年くる年でテレビから鐘の音が聞こえてくると、ああ、今年も終わるのだなと実感を得た。

 年の終わりには妙な寂寥感がある。大晦日は元旦と地続きで、日を跨いだところで劇的な変化など訪れるべくもないというのに、一抹の寂しさが頭をよぎる。

 日本人として30年以上を生きてきたことからくる刷り込みなのか、それとも生物的に何かを感じ取っているのかは定かではなく、本年の5月を迎えるにあたっていかような心境の変化をきたすか、それによって判別できるのかもしれない。


 挨拶が前後してしまった。あけましておめでとう。読者諸兄におかれましては、本年もどうぞよろしくお願いする。健やかならんことを祈る。


 本年も、例年に倣い部落の神社への参拝から始まった。神主もいない小さな神社ではあるが、それでも幟が立てられ、参道には煌々と光が灯っていた。幼少の頃は遊び場としてずいぶん世話になった神社である。数年前に多少手が入ったが、未だ当時の面影を強く感じられる場所だ。帰り際、村の幾人とすれ違った。北陸の冬、深夜零時はとにかく冷える。小雨がぱらつく中の参拝となった。


 帰宅後、熱いシャワーを浴びて身を清める。本来は大晦日のうちにやっておくべきことだが、生来の不調法ゆえご容赦願いたい。

 自室に戻り、「今夜も生でさだまさし」を見ながら作り納めのつもりで組み始めたHG1/144ガンダムダブルオースカイの続きに取り掛かった。昨年夏に目をやってしまって以降効率がずいぶん落ちてしまって、HGのプラキットをパチ組みするだけに都合6時間程度を要してしまい、完成した午前4時ころには船を漕ぐ始末。流石に限界だと布団に潜り意識を手放した。


 翌朝、午前6時50分に起床。父と連れ立って初日の出の御来光を拝みに出掛けた。

 冬の北陸というのは雪が降っているか、もしくは一日を通して曇っているのが常であり、初日の出を拝むことは難しい。僕が以前初日の出を拝めたのは5歳の頃であり、以降は振られ続けてきた。

 ところが今朝はピーカンの快晴である。所々に浮雲が漂う以外はスッキリと澄み渡った青空だ。

 僕と父は庄川の河川敷に陣取り、放射冷却でひりつくような寒さに耐えながら立山連峰の方向をにらみ続けた。ようよう白くなりゆく山際、少し明かりて。冬も真っ只中ではあるが絶景である。

 やがて太陽が、薬師岳の山頂付近からついに顔を出す。僕はサングラスを用意してこなかったことをひどく後悔した。それはまさしく光の爆発だった。寒空を切り裂いて彼方までを照らす強い光と、ほのかな熱量が遅い来る。

 僕は翳した手の向こうに黄金色の太陽を見て、密やかに感動に息を呑んだ。


 ご来光を拝んだあしで、高岡関野神社に初詣に赴く。高岡駅の目と鼻の先に佇むその神社は、近年無形文化財に登録された高岡御車山祭りの山車を保管していることでも知られている、市内でも有名な神社だ。もうすっかり日も出た時間帯であったことからも、そこそこ多くの参拝客で賑わっていた。参道の石段が凍りついていて新年早々ヒヤリとした。


 帰宅し、座敷に家族が集まり正月を祝う。普段は全く飲まない酒も、この日ばかりは祝い事、猪口に半分ほどだけ注いで乾杯した。空きっ腹に酒気が染み入る感覚は、何年たっても好きになれないものである。

 弟だけが出張中であり不在だったが、やつも今頃は遠い欧州でニューイヤーを祝っていることだろう。

 締めに祖母謹製の雑煮を頂く。祖母の雑煮は贔屓目なしに絶品である。我が家は具沢山のすまし汁に角餅だ。


 昼頃になって、8つばかり歳下の従兄弟が嫁を連れて挨拶にやってきた。昨年末に籍を入れたばかりの新婚さんで、我々家族は全力で囃し立てたものの、僕の肩身がまた一段と狭くなったのは言うまでもない。

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