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DELUGE

前にバネッサと入ったコーヒーショップに向かっている時、ふたたびエヴァンは幻聴に襲われた。デジャヴか?

エヴァンは急ぎ足でその音に向かった。音はどんどん大きく聞こえ、小走りになったエヴァンは確信した。

街角に再び悪魔が降臨していた。悪魔のデスボイスはさらに狂気を孕んで研ぎ澄まされていた。


「バネッサ!」


再びコーヒーショップ。すべてがデジャヴのようだったが今回はバンドメンバーも一緒だった。


「バネッサ、いつ戻ったんだ?」


「3日前」


「なんでラルフに連絡しないんだ!」


責める口調になったのはゆうべもラルフはエヴァンの胸の中でちょっぴり泣いたからだ。


「ごめんなさい。でも今回は誰にも頼りたくなかったの。実はね、すごいことが起きてるの!」


バネッサは興奮を隠しきれない様子で話し始めた。


「動画サイトでね、私たちの演奏がすごいことになってるの!」


「再生回数がハンパないの! メンバーから連絡もらうまで全然知らなかった」


「見て! この動画よ! 世界中からイイネって」


エヴァンはもちろん見なくてもわかっていた。

バネッサへの評価が不当だと感じたあの夜、動画をアップしたのはエヴァンだった。彼らの演奏とバネッサのデスボイスを世界中の多くの人に聞かせたかった。


「それでねエヴァン! もっとすごいの! 動画を見た音楽プロデューサーから接触があったの! あのクリストファー・スペンサーよ。元ロートレックの!」


バネッサもバンドのメンバーも興奮していた。


その時エヴァンは店内の喧騒の中、ひとり何かを思い出そうとしていた。

クリストファー・スペンサー? 母さんの葬式に参列してたよな、たしか。父さんがクリスって呼んでた人だ。あの時は今ほど有名人じゃなかったけど、間違いない。父さんの数少ない古い友人のひとりだ。世間は狭いな。


「それでね、聞いてる? エヴァン」


「あ、ごめん」


「クリストファー・スペンサー自身が来ることはないと思うけどたぶん代理の人が来るの明日。その時ラルフとエヴァンにも立ち会ってもらえないかな。ラルフは表向き弁護士だしエヴァンはマネージャーだし」


「誰がマネージャーだよ!」


しかしステージお兄さんの自覚はほんの少し残っていた。


「アハハ、結局またラルフたちに迷惑かけちゃうけど」


バネッサはまた翼を広げ始めていた。真っ黒いデビルの翼を広げチャンスを掴み取ろうと再び地上に降りてきた。今度はひとりではなくバンドという最強のチームを引き連れて。


ジョージアのバネッサの実家にネットから誕生したデスメタルバンド「DELUGE」のデビューCDが届いたころ。


ギルバート家には初めて賞をとった二男の新刊が送られてきた。その内容に家族は大いに照れるのだった。 


      

THE END




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