(2)
「ねぇ遥佳ちゃん、あたしって学校どうするの?」
瑠奈が遥佳に張り付きながら言った。
「リイユもっ!!あ、えっと柚伊里も!!」
柚伊里は変わった名前に少し戸惑いながら言った。
「あ~、佐倉小学校ってとこに転校するって言ってたけど・・・。」
遥佳は語尾をにごしながら言った。
そしてそのまま考えこんだ。
「あ~、どうするんだろ……。魔法のことしか習わないあそこにいたのに……。」
魔法学校はその名のとおり、魔法のことを習う。
逆に言えば、魔法のことしか習わないのだった。
人間界の勉強を全くしていない二人は、
本当にすぐ佐倉小学校に馴染めるのだろうか。
それが不安で遥佳は悩んでいたのだった。
「本当に、大丈夫かな……?」
そんな遥佳の心配も、瑠奈と柚伊里の歓声でかき消されてしまった。
「楽しみだねっ、柚伊里!!」
「そうだね、瑠奈。」
柚伊里は実の両親と別れたショックでか、
あまり楽しそうではなかった。
でも、瑠奈の気持ちにはすっかり負けて、
柚伊里はちょっと楽しみかな、とか思っている。
そんな柚伊里の気持ちを誰も知らないって言うのは……当たり前のことだった。
「明日から学校だから、早く起きないといけないんだよ?」
「分かってま~す!!でも楽しみで寝れないかもっ!!」
瑠奈はワクワクしすぎてそこら中を走り回った。
「瑠奈ったら、じっとしててよ。」
遥佳にそう言われても、瑠奈は全く聞かないのだった。
その姿に、遥佳も柚伊里もすっかりあきれていた。
柚伊里の心配は友達ができるか。
遥佳の心配は二人が勉強についていけるか。
そして、瑠奈の心配は何にもなかったのだった。
瑠奈の心には楽しみだという気持ちしかなかった。
そして、これから先のことなんて全く考えていなかったのだった。
それもそのはず。
瑠奈は明日くらいしか未来のことを考えない。
瑠奈は深く考えるのが苦手なのだ。
だから、遥佳は瑠奈が特に心配なのだった。