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「何で……?」
「ん? なんか言った?」
柚伊里が瑠奈の顔を覗きこんだ。
「え? あ、何もないよ」
瑠奈は慌てて言った。
柚伊里はその行動を不審に思った。
しかし、柚伊里は口には出さなかった。
「そっか。あ、瑠奈。あの子たちとしゃべらない方がいいよ」
柚伊里は念のために注意した。
瑠奈はそんな柚伊里の考えも知らずに、首を傾げた。
「うん。分かった……。このこと、遥佳ちゃんに言った方が良い?」
「ううん。私が言っとく」
「そっか。分かった」
二人はささやき合うと、パッと別れて、机の上を片付け始めた。
二人は仲良く家に帰った。
二人はあまり、他の子たちと関わらなかった。
でも、今日の一件があったせいか、誰も何も言わなかった。
柚伊里は今日の事を遥佳に言わなかった。
遥佳がまた、倒れたりしては困るからだ。
いずれ、瑠奈に言おうとしていたが、柚伊里は忙しい日々にそのことを忘れた。