(1)
ある村は、その村の住民のほとんどが魔法を使うことができる。
だが、そんな魔法使いに囲まれて過ごしている、魔法の使えない魔法使いがいる。
その魔法使いの名は、ルウラ。
ルウラは魔法使いの子供であるというのに、
生まれながら魔力を持っていなかったのだった。
たいていの子供は生まれながら魔力を持っているものだが、ルウラは違った。
ルウラには、魔力が全くなかったのだ。
この現象に驚いた両親はルウラを捨てて遠くの村へ引っ越していった。
捨てられたルウラを拾ったのは、魔法学校の優秀な生徒だった。
だが、その子はあくまでも生徒だったため、信頼できる先生にルウラを託した。
その時に付けられた名前が、ルウラだった。
そしてルウラは、魔法学校の先生のもとで成長し、魔法学校に通うことになった。
しかし、ルウラはこの頃になっても
魔法が使えなかったため、人間界へ行くことになった。
ある一定の年齢になっても魔法が使えないこの村の住民は、
人間界へ行くことになっていたのだった。
そして、人間界に慣れ親しみ、
一人で生活できるようになったら人間として残りの人生を生きるのだ。
今年度の魔力がない生徒はルウラとリイユの二人だった。
リイユは両親と共に過ごしているが、
いずれ人間界で過ごすことになっている。
そう考えれば、ルウラは幸せだったのかもしれない。
実の両親と分かれて一生会えなくなるよりも。
たしかに、この村の人々とは一生会えなくなる。
だが、それはどっちも同じなのだ。
リイユは自分に魔力がないことを
とても悔しがっていた。
でも、ルウラはそんなこともなかった。
ルウラは料理以外はほとんど自分でしていた。
そうじや着替えなどは、小さな頃からできていた。
だから、ルウラは料理さえできれば一人暮らしができるのだ。
とは言っても、ルウラもリイユもまだ小学3年生だった。
とても一人暮らしができる年齢ではない。
たとえ二人で過ごしても、3年生同士では変わりない。
そこで、5年前にこの村から人間界へ旅立った
高校2年生の女の子に、ルウラとリイユをおいてくれないかと頼んだ。
するとその子は快く引き受けてくれた。
その子の名は、人間名で高梨 遥佳。
元ハルルだ。
遥佳はルウラとリイユの名前を人間名に変えようとした。
そして、決まったのが瑠奈と柚伊里だ。
瑠奈と柚伊里は遥佳のもとで人間として暮らすことになった。