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私は川の流れと橋の上を走るトラックの騒音で目を覚ます。
昨日も寒さに震えて眠れなかった。
まぁ、この穴が空き、垢にまみれた雑巾のつなぎ合わせの様な服と段ボールの風避けでは無理もないのだが。
何日経っても、何年経っても冬の寒さになれることはないだろう。
私は震える体を擦り、何とか暖めようとするが一向に震えは収まらない。
それを見かねた隣人が沸かしてくれた湯を錆の浮いたカップに淹れてくれた。
「ありがとう。今日も寒いね…」
私は歯をカチカチ言わせながら礼を言う。
「お前、凍死するぞあんなんじゃ。」
かすれた声で同じような格好で異臭を放つ隣人の相良さんに怒られた。
「仕方ねえ。昼飯で手を打つが?」
「分かりましたよ。」
私より経験の長い相良さんは色々な場所を知っている。私たちの
中ではデパート的な存在だ。
金の代わりに飯を渡す。物々交換だ。
「んじゃ、私は行きます。お願いしますね。」
私は穴の空いた靴を引き摺り川沿いを歩く。
朝の通行人が顔をしかめて此方を見てくる。子供たちは私を指差して笑っている。
馴れた光景だ。
ホームレスに対する反応なんて、そんなものだろう。
しばらく歩くと次の橋が見えてきた。
この下は風通しと見通しが良すぎて住人はいない。
私は橋のたもとに移動する。
辺りを見回して目的の物を見つけた。
急いで拾い缶の裏側を確認する。
間違いない、目的のものだ。
缶切りを取り出し中身を取り出す。
さぁ、次は食べるもの探しだ。
急がないと収集車が来てしまう。