EPISODE1 -廃部の危機!?-
授業が終わり、部室に向かうと途中で顧問のメイ先生が校長と話しているのを見た。
「.........と言う訳で名倉先生、頼みましたよ。」
「はい......わかりました.........」
トボトボと歩いているメイ先生に、
「先生どうしたんですか?」
と聞くと童顔をこちらに向けて、「人生部の廃部の話でした。」とだけ呟いた。
いつか来るだろうと思っていた。三年の先輩が2人卒業したものでうちの部は規定の5人を満たしていないからだ。
「廃部を取り消すことはできるんですか?」 と聞くと、
「できるにはできますけど、明日の放課後の職員会議までに3人集めなくてはいけない、との事です」
「明日までに3人か。うん、ムリだな」
「諦めないで下さい。私はこの部が好きなんですよ~」
「先生!」
涙が浮かんできた。そうか、先生はこの部が好きなんだ。
「運動系の部活は背が低くてできないし、私、絵を描くことや楽器を吹くことも苦手ですから」
「まあそうだとは思いましたけどね!!」
涙は払う。まだ泣く必要はない。
「それでもこの部が好きなんですよ」と、メイ先生が言う。
俺はまた涙を流し、
「メイ先生」と言う。
この人が言うと冗談には聞こえないから効果はバツグンだ。
「それにしても、一学期が始まって一週間は経ちますからね。新入生もほぼ全員が部活に入ってますし」
「そうなんだよなー」と俺。
すると後ろから、
「そこ、通してくれる?」 と声をかけられた。
振り向くと目の前にはダンボールがあった。
「えっ」
当然だろう。だって目の前にダンボールを頭に被った女子の制服を来ている人がいるんだから。
「桐谷さん。どうしたんですか?」
桐谷って確かウチのクラスの一番後ろの窓側の席の人だよな。
初対面がダンボール頭って何だよ。
「名倉先生。すみませんがこの前の件どうなっているんですか?」
と首を傾げるダンボール。
「すみません桐谷さん。お助けできなくて」 とメイ先生は俯きながら答えた。
「いいですよ。ムリ言ったのは私なんですから。そうだよなー。運動部じゃなくて、家からチャット参加ありの部活なんて他にないもんなー」
「良かったらウチの部に来ないか?」 と俺。
「へー。どこの部?」 ダンボール頭は聞いてくる
「人生部って所だけど、どう?」
一瞬だけダンボールが軽く頭をまげて質問してきた。
「人生部の活動って、何をやっているの?」
「特に決まっている活動はない。活動の目標は普通の人生を送るため努力しよう・・・と言うものなんだけど」
「やめろよ!冬花!やめろって!」とか言いながら桐谷が頭のダンボールを外そうとしている。
「どうしたんですか?」とメイ先生が聞いても返事は無く、ダンボールを掴んでいる手が少しづつ上がっていく。
「どうしたんだよ?」
俺も聞くが、返事は無かった。と思った次の瞬間、
ダンボールが、
宙に、
飛んだ。
「まったく、夏姉はまた勝手に私の身体を占拠して......」
そう言って、黒のポニテを揺らした少女は自己紹介を始めた。
「初めまして。桐谷冬花です、よろしくね。」と。