EPISODE 0
校舎の一番端にある部室には近付くなというのがここ、水仙高等学校における生徒間の暗黙の了解である。
なぜ、こんな謂れがあるかと言うと去年新たに設立された部活、人生部ができたからである。
人生部の活動目標は常に“普通の生活を送るために努力しよう”というものだ。
部員は3人。
しかし、三人の誰もが強烈な個性を放っている。
一人は俺、藍沢マコト。二次元好きのオタクだ。
普段は場を弁えて大人しくしていたが、時折暴走を始めるという理由でマンガ部を辞めさせられた。
しかし他に目に付く部活が無かった為、“無ければ作れば良いじゃない”というあるアニメのヒロインのセリフからこの人生部を作ったと言うわけだ。
二人目は俺の悪友の薪島ユウスケ。
ユウスケは今のメンバーの中では一番マトモだと思う。(無類の女好きというのを除けばだが)
入部理由は“暇だから”という理由だ。
前に「暇なら彼女を作れば」と言ったが、「ムリや」と言われた。
何故か聞くと、「オノレは一人だけやなくもっともっとようけの女子を知りたいからまだええ。」と笑いながら言った。
その時に彼を人生部に誘った。彼も「よろしくな~」と言い入部届を出してくれた。
そして3人目、ウチの部で最も大変な奴。俺とユウスケの悪友、平石タツヤだ。
コイツはこの学校一の厨二病の持ち主で授業中は興味のある場所以外はずっと妄想ばかりしている。
現在は小説をネットに投稿しているらしい。人気は上々だそうだ。
最後に顧問、名倉メイ。
年齢は23歳らしいが、見た目が小学生、せいぜい中学生にしか見えない小さな教師。
しかし、見た目に反して東大卒と言う超がつくほどの天才らしい。
人生部の部員三人を周囲の学生達は「危険な3人」という認識を新入生に教えるために“スリーリスキー”と呼んでいる。
だが俺達は人生部が好きだ。誰に何と言われようがその決意は揺るがないな、と思いながら今日の活動を終わりにした。