表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/100

第37回 馬鹿!

 アルバー王国の都市 ディバスターに向って歩き続けるティルとミーファは、かれこれ一週間は歩き通している。

 山を越え、つり橋を渡り、時には絶壁の側を歩き、二人はようやく中間地点の町へと辿り着いた。名前の無い町は、静かで活気など欠片も無い。どの家も草臥れ、嵐が来たら全て吹き飛ばされるんじゃないかと思わせる。

 そんな町の様子を伺うティルは、渋い表情で腕組みをしている。そして、町に入ろうとするミーファに向ってボソッと言う。


「さて、行くか」

「エッ!?」


 その言葉に耳を疑うミーファは、ティルの方を見る。だが、ティルはボロボロのコートを風になびかせながら歩き出す。信じられないという表情を見せるミーファは、駆け出しティルの横に並び問いかける。


「どうして、町があるのに休まないのよ! 宿にだって泊まれる位のお金は持ってるのに!」

「お金の問題じゃないんだよ」


 必死に講義するミーファに、静かにそう言ったティルの表情は少し暗かった。それでも、納得のいかないミーファは更なる追求を。


「お金の問題じゃないなら、何の問題なのよ!」


 その言葉に深いため息を吐くティルに、少々イラッとするミーファ。そんなミーファに、ティルは少し寂しげな瞳で言う。


「あの町は、税金が納められない程貧しい。俺達があの町に泊ると、あの町の人達は更に苦しむ事になる。だから、この町には寄らない。それに、早くディバスターに着けばフカフカのベッドのある宿で眠れる。お前も、その方がいいだろ?」

「そうだけどさ……」


 ティルの言葉に俯きながらそう答えるミーファ。確かにディバスターに着けば良い宿に宿泊できるかもしれないが、果たして今のお金で足りるんだろうかと、不安が募るミーファだった。

 少々気落ちするミーファに、今度はティルが深刻そうな声で問いかける。


「なぁ、本当にディバスターにフォンは居るのか?」


 その問いにミーファは腕を組みながら少し悩む。一体、何を悩んでいるのか分からないティルは、ミーファに疑いの目を向ける。そんなティルの視線に気付いたのか、ミーファが焦りながら笑みを作り答える。


「居るよ。居るに決まってるじゃない。もしかして、私の事信用してないとか?」


 こんな状況でも笑っているミーファに、ティルは怒りを覚えその怒りがつい言葉に出てしまう。


「よくそんな風に笑っていられるな。大体、どうして黒き十字架がディバスターに向ったと分かるんだ? 都市に本拠地があるからとか、言うんじゃないだろうな?」


 その言葉にミーファは深く傷つき足を止める。ティルも少し離れた位置で足を止める。周りには何も無いため、ただ風だけが砂埃を巻き上げて吹き抜ける。沈黙が続き、ミーファの右目から薄らと涙が流れる。その途端、涙が止め処無く溢れ出し、ミーファは両手で顔を覆う。だが、ティルは何も言わずただ、泣き崩れるミーファを見ているだけだった。

 暫く黙って見ていたティルは、ミーファに背を向け低い声で呟く。


「行くぞ。時間が無いんだ」


 冷たい態度のティルは、そう言い歩き出す。遠ざかってゆくティルの足音に、ミーファは思いっきり叫ぶ。


「私だって! フォンの事が心配だよ! でも、私まで深刻そうにしてたら、フォンを助ける希望が持てないじゃない!」


 だが、ティルは振り向きもせずに歩き続ける。そんなティルに向って、ミーファは更に大きな声で叫ぶ。


「ティルの馬鹿ーッ!」


 涙を右手で拭い、ミーファは走ってティルを抜き去ってゆく。そのミーファの後姿を見ながら、ティルはふと昔を思い出し、ゆっくりと微笑む。そして、前を歩むミーファに追いつき、照れくさそうに静かに言う。


「さっきは……、俺も言い過ぎた」

「俺もって、何よ。まるで、私も悪かったみたいな言い方しちゃって」

「なっ! お前――」


 ソッポを向くミーファは早足でティルとの距離を取る。自分は悪くないと言わんばかりの態度に、ティルは呆れて言葉を失った。

 この度、総アクセス数が400人を超え、嬉しい事この上なしです。

 連載開始当初は、全くと言うほどアクセス数が無かったものの、流石に37話まで来ると400を超えるんだと、驚きを隠せません。

 最近、更新が遅れておりますがなるべく、一日一話を目標に更新していきたいと努力しております。

 それでは、ご愛読してくださる皆様、今まで読んでくださりありがとうございます。

 そして、まだまだ続くこの作品をこれからも、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ