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第34回 獣人対烈鬼族

 小雨の降り頻る中、複数いる黒き十字架の面々と互角に渡り合うティルだが、何度も何度もフォンの方をチラチラと見ている。それは、ティルがあの眼帯をしている男の事を風の噂で知っていたからだ。そんなティルに、一人の男が言葉を吐きながら突っ込んでくる。


「人の心配をするより、自分の心配をしたらどうだ!」


 余所見をするティルだが、男の声に素早く反応し鮮やかな棍裁きで、振り上げる剣の柄を突き勢いを弱めてから男の左太股を殴る。その衝撃で男の体が崩れ落ち、周りは一瞬で静まり返る。

 そして、鋭い目付きで周りの男達を一括しながら、ゆっくりと口を開く。


「悪いが、お前達とお喋りをするつもりは無い」

「黙れ! 貴様、黒き十字架に逆らってどうなるか――!?」


 言葉を発する男の腹にティルの棍が一突きされる。傷一つ無かった男の鎧は、砕かれて亀裂が走る。それと同時に、その男の体が前方に崩れ落ち動かなくなった。ティルは軽く棍を回し周りの男達を牽制する。

 一方、眼帯をした顔に傷のある男に一方的に攻め立てられるフォンは、徐々に逃げ場を失いつつあった。足元にはフォンの着ていたコートから漏れた大量の綿が落ち、フォンはそれを見ながらちょっと悲しい目をしている。


「どうした! 獣人はいつから臆病になった!」


 剣を振るいながら眼帯をする男は棘のある声で叫ぶ。だが、フォンはそんな安い挑発には乗らず、落ち着いた様子で言い放つ。


「オイラは臆病じゃないぞ! それに、オイラはあんたと戦う理由は無い!」

「戦う理由ならあるさ。お前が獣人で俺が烈鬼族と言う事だ!」


 怒りに満ちた目でフォンを睨み、素早く剣を振るう。刃は右頬を掠め、左手の甲を傷つける。頬から流れる血を右手で拭うフォンは、ゆっくりとコートを脱ぎ捨て真剣な眼差しで眼帯をした男を睨む。

 その瞬間、眼帯をした男は背筋が凍るかの様な威圧感を肌に感じ、フォンからすぐさま距離を取り剣を構えなおす。

 緊迫した空気の中、対峙するフォンと眼帯をした男。雨の雫なのか流れ出る汗なのか分からないが、眼帯をした男の額から流れる透明な雫。


「いよいよ、本気を出す気になったようだな」


 少々顔を強張らせながらも、眼帯をした男は口元に笑みを浮かべる。微かにだが手足が震える眼帯をした男は、その震えを必死に押し殺しながら剣を構え真っ直ぐフォンを見据える。

 左足を引き全身の力を軽く抜くフォンは、ゆっくりと息を吐き眼帯をした男に言う。


「戦いはしたくない、出来れば話し合いで解決出来れば良いと思ってる」

「話し合いだと? 獣人が何を馬鹿な事を!」


 怒りの篭った声で眼帯の男が言い放つ。多分、もう彼は威圧感を感じておらず、体の震えもすでにとまっている。獣人に対する怒りと憎しみだけが、彼の頭に蘇り今にもフォンに斬りかかろうとしている。だが、フォンは更に言葉を続ける。


「でも、オイラの仲間や友を傷つけると言うのなら、オイラは……」


 俯き言葉を詰まらせるフォンに、眼帯をした男が怒りの声を上げる。


「黙れ! お前達獣人が仲間などと言う言葉を使うな!」


 木の床を蹴りフォンとの間合いを詰める眼帯をした男。剣を握る手には力が入り、わずかに剣の構えが甘くなっている。フォンはそれを見逃さなかった。

 向ってくる眼帯をした男にフォン、自らも向っていく。もちろんそのスピードは桁外れで、一瞬にして眼帯をした男の目の前に現れる。だが、それに驚きもせず眼帯をした男は剣を振りぬく。剣が勢い良く振りぬかれるが、眼帯をした男はその手に何も感じなかった。そして、目の前からフォンが消え両肩を激しく蹴り飛ばされる。

 一瞬、全ての物がスローモーションの様に遅く見える眼帯をした男。自分の体が前方にゆっくりと倒れていくのが、頭ではわかっていた。だが、体を支える事は出来ずそのまま木の床の上に崩れ落ちる。そんな、男の視界には走り去るフォンの後ろ姿だけが映っていた。


「どうだ! これぞ、緊急回避・馬跳びだ! 我ながらネームセンスが悪い」


 走りながらチラッと、眼帯をした男を見てそう言ったフォンは白い歯を見せながら、笑みを浮かべる。その瞬間、フォンの耳にティルの声が届いた。何か危険を知らせてくれるような大声が――。

 長い間更新が遅れていましたが、ようやく更新することが出来ました。

 楽しみにしていた皆様には本当に申し訳ないと思っております。次回からはこのような事が無い様にしていきます。

 本当にすみませんでした。

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