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第31回 クロスワールド

 ××××年。この世界『クロスワールド』は、多くの種族によって支えられていた。

 知能の優れた文明を持つ『天賦族てんふぞく』 風を操り風と生きる『風牙族ふうがぞく』 龍と共に暮らし龍を降臨させる『龍臨族りゅうりんぞく』 空を自由に飛びまわる『空鳥族くうちょうぞく』 自然を愛し自然を守ろうとする『地護族ちごぞく』 灼熱の炎が体内を流れる『炎血族えんけつぞく』 水中で呼吸のできる『水呼族すいこぞく』 未来を見る事の出来る瞳を持つ『時見族ときみぞく』 どんな傷でも癒す力を扱う『癒天族ゆてんぞく』 自らの力を鍛え戦いを好む『烈鬼族れっきぞく』 これら様々な種族が暮す事から『クロスワールド』と名付けられたのだろう。

 どの種族も平和に仲良く暮すこの世界は、時代の流れが進むにつれ様々な変化を見せ始める――。

 ××××年。自然を守ろうとする地護族は、文明の為と森を伐採する天賦族との間に激しい争いが起き、それが原因で今まで平和に暮らしていた種族は東西南北の大陸へと散らばった。

 そんな中でも、我々人間は一纏まりにならず、四大陸全てに止まり続けた。



 ――題名の無い本の四分の一をようやく読み終えたフォンだが、本を読みなれていないため、急激な睡魔に襲われていた。机の上に座りフォンが本を読み終わるのを待つティルは、欠伸をするフォンに訪ねる。


「何処まで読んだ?」

「うう〜ん。やっと、四分の一って所かな。ふぁ〜……」

「まだ、四分の一か。随分、時間がかかってるな」


 眠そうに欠伸をするフォンを、少々馬鹿にするかの様にティルが笑みを浮かべるが、特に変わった反応を示す訳でもなく、フォンはティルに本を差し出す。フォンは自分の限界を感じたのだろう。差し出された本をティルが受け取ると同時に、フォンの体が机の上に沈んだ。


「スー……スー……」

「しょうがない。俺が読んでやるか……」


 寝息を立てるフォンの横で、ティルがゆっくりと本の続きを読み始める。



 ××××年。東の大陸に天賦族・空鳥族・水呼族が集まりフォースト国を立ち上げる。それに、続けと言わんばかりに、西の大陸に地護族・風牙族・烈鬼族が集まりアルバー国を立ち上げた。


 ××××年。東と西の両国の争いが強まる中、北の大陸で龍臨族と炎血族が双方の戦いを止め様とグラスター国をうちたてる。だが、争いはグラスター国をも巻き込み更に戦火を強めた。


 ××××年。激しくなる戦いに耐え切れなくなった時見族と癒天族は南の大陸にニルフラント国をうち立て、我々は一切戦いに関与しないと宣言する。だが、この時すでにニルフラント国はこの戦いに巻き込まれる運命だったのかもしれない。


 ××××年。アルバー国に様々な武器で応戦するフォースト国の面々だが、烈鬼族の圧倒的な力に敗北寸前まで追い込まれる。そんな中、天賦族は烈鬼族に対抗すべき新たな生物を生み出そうと、実験を進めていた。この実験があの悲劇の始まりだったのだ――。


 ××××年。あの実験がついに実を結ぼうとしていた。フォースト国の実験が危険な物だと、予知した時見族はそれを止め様と試みニルフラント国は兵を動かす。だが、その実験の失敗作の獣の様な人間(獣人)に拒まれ実験を止める事は出来なかった。


 ××××年。遂にあの実験で烈鬼族をも上回る力を持つ生物が生み出された。化物の様なその生物は、すでに天賦族の手におえる状態ではなく、フォースト国はその化物達によって全てを失う。その後、化物達は知識を付け進化し、他の大陸へと侵略を始めた。

 この日から我々の悪夢は始まったのだ。


 ここで、本は終わっている。歯切れの悪い終わり方にティルは、複雑な表情をする。歯切れの悪い終わり方と言うのもあるが、一番複雑なのは獣人がなぜ生まれたのかと言う点だった。まさか、獣人が戦争の為に生み出された生物の失敗作だったなど誰が予想できただろう。

 そんな複雑なティルの気持ちなど他所に、フォンは静かに寝息を立てていた。

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