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第17回 三体の魔獣

 大きな鉄柵の門の前にティルは居た。広い庭に幾つかの電灯が灯っていて、門から屋敷までの道を照らして、特に人の気配も無く、簡単に入り込めそうだ。

 軽く剣を構えたティルは、鮮やかな剣さばきで鉄柵を切り刻む。一太刀で切り刻まれた鉄柵が、石畳の道に落ち鉄と鉄がぶつかり合う音が響き渡る。


「門の鍵位開けとけってんだ」


 そう呟きティルは門をくぐったその時、何かの喉を鳴らす音が闇の中から聞こえてくる。


「グウウウウッ」


 ティルはその声の方を向くと電灯の明かりの届かない暗闇から三体の魔獣がゆっくりと歩み寄ってくる。音も起てずに近付く魔獣の首には妙な首輪が巻かれていて、目付きが尋常じゃない。きっと何等かの実験台にさせられていたのだろう。

 魔獣達の爪も牙も鋭く尖り電灯の光でキラリと輝き、今にもティルに喰いかかろうとしている。


「全く、こんな連中まで集めるとは……」

「グウウウウッ」

「ガルウウウッ」

「ガアアアアッ」


 三体の魔獣に囲まれたティルはお金の入った鞄を下ろして、剣をゆっくりと構える。妙に距離をとる魔獣に違和感を感じるティルに、三体が同時に襲い掛かった。一体が足を、もう一体が胴体を、そして最後の一体が頭を狙って飛んで来る。


「これで、体力を削る気か?」


 ティルはそう言って足に飛んできた魔獣を蹴り飛ばし、胴体に飛んで来る魔獣の首を剣で切り裂く。そして、頭に飛んできた魔獣をかわす。だが、魔獣の爪がティルの頬を掠り、血が少々飛び散る。首を斬られた魔獣の頭がティルの足元に転がり、血が溢れている。

 前と後ろには魔獣がおり、完全に挟み撃ちにされたティルは、剣を構えたまま二体の魔獣を睨む。そして、また二体の魔獣が同時にティルに襲い掛かる。今回は二体とも胴体を狙って飛ぶ。


「クッ! 同じ所を狙って来たか!」


 正面の魔獣に剣を振ったティルだが、剣の刃は魔獣の牙に受け止められる。刃に噛み付いた魔獣はピクリともせず、ティルは剣を動かす事が出来ない。焦るティルの耳に、幼い男の声が聞こえた。


「ティル! さっきは痛かったぞ!」

「フォン!?」


 フォンはティルを背後から襲おうとする魔獣の頭を思いっきり地面に殴りつけた。鈍い音が響き激しい風が起き、その衝撃で大地が少しばかり揺れる。魔獣の頭は地面にめり込み動かなくなる。完全に頭蓋骨を砕いたのだ。

 息をゆっくりと吐きながらフォンはティルの方を見る。驚きを隠せない表情のティルは、一瞬剣の柄を握る手が緩む。その瞬間に、魔獣が刃から口を離すと一気にティルに襲い掛かる。


「ティル!」

「!?」


 フォンの声でティルは魔獣が襲い来るのに気付きとっさに、剣を振りぬく。風を切るかのように音も無く振り抜かれた剣には、多少血が付いていた。口を開けたままの魔獣の首に真っ赤な線が走り、ゆっくりと道に落ち大量の血が舞う。血腥さにフォンは顔を歪め鼻を摘みながら言う。


「なぁ、もっと血を流さない様に出来ないのか?」

「無理だ。剣で斬れば血が出るのはしょうがない事だ」

「それじゃあ、剣使うなよ」

「人間相手なら剣は使わんさ」


 そう言ったティルに屋敷の扉の前から声が響く。鋭く尖った様な殺意のこもった声が。


「人間相手なら剣は使わんか。面白い事を言うな。なら、俺の仲間は皆人間じゃないのか」

「誰だあいつ?」

「お前には、関係ない」


 フォンの問いを軽く受け流したティルは、剣を構えて屋敷から出てきた真っ赤な髪の男を睨む。真っ赤な髪の男は、靴の踵を鳴らしながらゆっくりとティルの方に歩み寄る。そして、腰にぶら下げた片刃の剣を抜き、その刃先を地面に引き摺る。石を削る音が聞こえ、所々で火花が散る。


「お前にはここで死んでもらうぜ」

「あ〜っ。その前に、ミーファ返してくれないか? お金もちゃんと取り返してきたからさ」


 真剣に睨み合う二人の雰囲気をぶち壊すかの様に、フォンがのん気な声で言う。だが、真っ赤な髪の男は何も答えずにティルを睨む。部外者が口を出してはいけない様な雰囲気を漂わせてくるが、フォンはそんな事御構い無しに返事をしない男にムキになって言う。


「ミーファは何処だ!」

「無駄だフォン! こいつにお前の言葉は聞こえてない。俺がこいつと戦う。その間にミーファを探して来い!」

「わかった。けど、あんまり無理すんなよ」


 そう言ってフォンはティルに微笑みかけ、そのまま走り出す。真っ赤な男の脇をそのまま通り過ぎたフォンは、その男の異様な殺気に何やら不吉な事を頭で浮かべてしまった。

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