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第14回 謎の少女

 鎖で腕を縛られ宙吊りにされるフォンとティルの二人は、血を流しすぎて意識が朦朧としている。瞼も重くなり急激な睡魔に襲われる二人に妙な声が聞こえてくる。優しくて暖かな少女の声が。


「あなた達は、こんな所で力尽きてはなりません」


 その声に目を薄らと開くフォンとティルの前には、青光りする真っ白のドレスを着た少女が立っていた。顔はよく見えないが金髪の長い髪が風でなびいているのがよく分かる。何か言葉を発しようとするフォンとティルだが、声が出ない。やはり、血を流し過ぎたのだろう。

 必死に声を出そうとするフォンとティルの体が、次の瞬間床に落ちる。両足で真っ赤に染まる床に着地し、腕を縛る鎖が緩まり体が軽くなる。二人は顔を上げその少女にお礼を言おうとするが、彼女の姿はそこに無く倉庫の壁だけが遠くに見える。


「アレ……。あの娘は?」

「消えた……のか?」

「まさか、幽霊じゃないんだから」


 笑いながらフォンはそう言うが、幽霊じゃないとすれば、あの少女は何処に消えてしまったのだろうと、思いながらティルは首を傾げた。

 そして、ティルは木箱の上に置かれたボックスを手に取り、その形を変えて行く。それを見て、ため息を吐きながらフォンは呆れ声で言う。


「まだ、そんなのいじってるのか? そんな事してるからやられちゃうんだぞ」

「黙れ。お前は油断するからやられるんだ」

「油断なんかしてないぞ! オイラはお前のカバーをしてて」

「誰も、カバーしろなんて言ってない」

「お前な……。素直じゃないな」


 ティルの態度に呆れるフォンは、もう一度ため息を吐き首を横に振る。そんなフォンを、無視してティルはボックスの形を黙々と変化させる。

 フォンは辺りを見回し、ミーファの姿を探すがそこにミーファの姿は無かった。


「なぁ、ミーファが居ないんだけど、どうする?」

「そうか。なら、お前の鼻で探せ。ここもお前の鼻で見つけたんだ」

「お前さ……。俺の事と犬だと思ってないか?」

「そうだな。その嗅覚は犬並みだからな。さして犬と変わらないだろ?」

「変わるに決まってるだろ! オイラは獣人だ! 犬と一緒にするな馬鹿!」


 騒ぐフォンを無視してティルは武器を完成させる。ボックスは長く黒い棍に変化し、それを軽く回しながら、ティルはフォンの方を見る。目をギラギラに輝かせるフォンは、ティルのボックスに興味を持っている様だ。


「その箱凄いな」

「まぁ、フォースト王国の発明品だからな」

「フォースト王国って、何処?」

「お前、フォースト王国知らなかったのか」

「いや〜。全然知らんな。オイラ、地図なんて見た事ないし、って言うかオイラの住んでた場所に地図なんて無かったから」


 笑いながらそう答えるフォンに、呆れて物も言えないと言った感じの表情をするティル。それもその筈、この世界を治める四大王国を知らない者など、まずありえない事なのだ。肩を落としうな垂れるティルの耳には、無邪気に笑うフォンの声だけが聞こえていた。

 その時、フォンの笑い声に混じり無数の足音が近付いてくるのが聞こえる。その音にフォンも気付き笑うのを止めて耳を澄ます。靴の踵が堅い床を叩く音は、倉庫の側まで来て止まる。

 息を殺し身を隠すフォンとティル。扉の鍵が開く音が静まり返った倉庫内に響き渡り、暫く間があって扉が軋みながら開かれ、あの男達の声が響く。


「グヘヘヘヘッ。あいつ等はもうくたばっちまったか?」

「どうでしょう? まぁ、あんだけ痛めつければ大丈夫ですよ」

「しかし、残念なのはあの女だな」

「でも、結構なお金になったじゃないですか」

「そうだな。今日はあの金で楽しもうぜ」


 その言葉を聞いたフォンとティルは木箱の側からゆっくりと前に出る。暗がりに映し出されるフォンとティルの姿に、男達の表情が強張りゆっくりと数歩後退る。その男達に向かいまずフォンが優しく微笑みながら言い放つ。


「さっきは随分と楽しんでたね」


 傷だらけの顔で笑みを浮べるフォンは、一歩前に踏み出し指の骨を鳴らす。それに続くようにティルが怒りの篭った低い声で言う。


「今回は俺等が楽しませてもらうぞ」


 鋭く男達を睨みつけながらティルも、一歩前進し棍で右肩を数回軽く叩く。横に並んで立つフォンとティルは、完全に戦闘態勢に入っている。


「まぁ、なるべくは話し合いが良いんだけど、こういう連中は魔獣と一緒で言っても聞かないからね」

「珍しく意見があったな」


 軽い準備運動をしながら男達を睨むフォンに対し、ティルは棍を振り回しながら鋭い目付きで男達を睨んでいた。

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