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第13回 二つのサンドバッグ

 男達に囲まれ苦笑いを浮べるフォンとティル。ミーファは二人の間抜けさに呆れていた。

 ナイフを持った男は不適に笑いながらフォンとティルに言い放つ。


「グヘへへへッ。誰かと思えば、檻にいた馬鹿な獣人と、生意気な色男じゃねぇ〜か。貴様ら二人でこんな大勢を相手に出来るかな?」


 その言葉にカチンと来たフォンとティルは、同時に男の方を睨み付ける。その二人の目に怯み後退り、少し震えた声で命令する。


「やれ! そいつ等をぶっ殺せ!」

「ウオオオオッ」


 ナイフを持った男の声に、男達が威勢の良い声でフォンとティルに向って来る。フォンとティルは背中合わせに立ち小声で話する。


「ティル。人間は殺しちゃ駄目だぞ」

「誰が殺すか。俺が殺すのは獣と魔獣だけだ」

「よかった。それじゃあ、オイラは殺されないね」

「さぁな。お前は別だな」

「何でだよ。まぁ、いいや。取り合えず、半分半分で」

「ああ、わかった。行くぞ」


 ティルはそう言いボックスを取り出し、形を組み替えるが中々うまく行かない。その間、フォンが襲い来る男達に鋭い突きを入れ男達を次々と倒していくが、数が多く次から次へと男達が襲い来る。

 未だにボックスを武器に出来ないティルに向って、大勢の男と戦うフォンは叫ぶ。


「おい! 早くしろよ! オイラ一人でこんな大勢相手に出来ないぞ!」

「黙ってろ! 俺だってこいつはまだ使い方分からないんだよ」

「なんだよ! それ、お前の武器だろ!」

「これは、知り合いから貰った特殊な武器なんだよ。それより、声掛けるな。気が散る」

「気が散るじゃないだろ!」


 文句を言いつつもフォンは男達を殴り飛ばしていくが、そんなフォンに大きな金槌の様な物が振り抜かれた。他の男達に気を取られフォンは大きな金槌をかわす事が出来ず、背中に直撃を受けて激しい痛みを感じると同時に体は宙を舞い、倉庫の壁際に置かれた大きな木箱の上に落下する。

 木箱はフォンの落下した衝撃で破壊され、埃が辺りに舞い上がりその崩れた木箱の上でフォンが倒れたまま動かなかった。


「フォン! 大丈夫か!」


 フォンの事に気を取られたティルは、背後から鉄のパイプで激しく殴れてその場に倒れた。その後、周りの男達が一斉に倒れるティルと、動かないフォンに襲い掛かる。

 髪を掴みティルの体を起こし、顔を思いっきり殴りつける。唇が切れ真っ赤な血が床に飛び散る。一方のフォンは二人の男に腕を掴みあげられ、大きな金槌の様な物で激しく体を打ち付ける。フォンの口からは大量の血が吐き出され、その血が床を赤く染める。

 口を縛られて声を出す事の出来ないミーファだが、その目には涙が溢れている。


「グヘヘヘヘッ。俺等に口答えするから、こう言う目にあうんだ」


 不適に笑うナイフを持った男の声と鈍い音だけが、倉庫の中に響き渡る。その後も一方的にフォンとティルを痛めつけた男達は、鎖で腕を縛り宙吊りにした。宙吊りにされたフォンとティルはサンドバッグの様に男達に何度も殴られている。


「こりゃ、いいサンドバッグだぜ」

「全くだぜ。殴りやすくて最高だぜ」


 フォンとティルを交互に殴り飛ばしていく男達。力無く二人の体は宙を行ったりきたりする。鎖の軋む音が二人を殴るたびに聞こえてくる。二人の着ていた物はボロボロに引き裂かれて、所々血が出ている。

 ようやく、男達が寝静まった倉庫の中で、フォンの声が響く。


「さ〜む〜い〜」


 そのフォンの声に、低い声でティルが答える。


「黙れ」


 そう言って痛みに顔を歪めるティルに、フォンが小さく笑いながら言う。


「痛そうだな。折角の顔が台無しだぞ」

「お前こそ、その可愛らしい顔が汚く見えるぞ」

「んだと! 誰のせいでこうなったと思ってるんだ!」


 そう叫ぶフォンに、ティルはため息を吐きながらゆっくりと言う。


「やめよう。この状況で言い争っても何にもならんからな」

「そうだな。助けに来たのに捕まっちゃな……」


 二人は同時にため息を吐き、自分の足元を見る。床には足先から落ちる血が、水溜りの様に溜まっているのが見える。この時、結構な量の血を流していると気付く。すると、なぜか目の前が霞んできた。

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