第11回 イヤラシイ男
宿の中をキョロキョロとしているミーファに静かに歩み寄る男達。流石に身の危険を感じるミーファだがすでに逃げ場を失ってしまう。
「ウヘヘヘッ。こんな宿に、一人で宿泊かい」
「俺達が一緒に泊まってやるぞ」
男達はミーファに変な目で歩み寄ってくる。魔獣達よりもこの男達に恐怖を感じるミーファが、声を出す事が出来ずにいると男達の後ろから低い声が響く。
「オイ。怖がってるだろ」
「はぁ? 何だと!」
その低い声に男達が振り返る。その瞬間、その声の主をミーファは確認した。スラッと伸びた背丈に、大人びた顔付きで切れ目の男性。先程フォンと話していた人物と一致する。男達はティルを睨みながら歩み寄るが、表情を変えずにティルは男達を見回し呟く。
「フッ。馬鹿みたいな面並べて……」
「何だと! 少しばかり良い顔してるからって、図に乗るなよ!」
男の一人がティルに殴りかかる。ティルはその男の腕を掴むと、そのまま投げ飛ばす。机に背中から叩きつけられた男は、立ち上がることが出来ずに、腰を抑えたまま四つんばいで逃げ出した。
「くっそ! 覚えてろよ」
こんな捨て台詞を吐いて。それにつられる様に他の男達も去って行く。ティルはミーファの方に近付き言葉をかける。
「大丈夫か? 大体、こんな物騒な所に女が一人で来るもんじゃないぞ」
「えっ、その……」
「それじゃあ。気をつけろよ」
自分の部屋に戻ろうとするティルに、ミーファが緊張しながら声を上げる。
「あなたに、話があってきました」
「俺に?」
怪訝そうな表情でティルはミーファを見る。妙に警戒するティルにミーファは言葉を続ける。
「実は私のボディーガードに……」
「断る」
ミーファが言い切る前に、ティルは即答する。その言葉に反論しようとするミーファだが、ティルに睨まれ声を出す事が出来なかった。そんなミーファにティルはきつい一言を言い放つ。
「消えろ。俺は人と仲良く旅をする気はない。それに……」
急に言葉を詰まらせるティルに、ミーファが恐る恐る聞く。
「それに、なんですか?」
「お前に関係ない。もう、ここには来るな。いいな」
「はい……」
がっくりと肩を落として宿を出て行く。そして、重い足取りでフォンのいる中央広場にミーファは戻る。檻の中のフォンはのん気にも寝息をたてている。それに、むしょうに腹のたったミーファは、石をフォンにぶつける。その瞬間、フォンが頭を押えながら飛び起き檻の外に居るミーファを見る。
「何すんだ! 痛いだろ!」
「うるさい! 何か文句あるわけ!」
「逆ギレですか……」
小声で呟いたフォンの声は、ミーファに聞こえる訳も無く、ミーファは深いため息を吐きながら呟く。
「何よ。顔は良いのに、雰囲気が悪いわ。私は、ああ言う人苦手だわ」
それが、誰を指すのかフォンには分かった。と、言うよりミーファの意見にフォンも納得している。フォンもティルの事が嫌いだし、苦手だと思ったいる。ミーファの口からはティルに対する不満がマシンガンの様に打ち出される。何の発言も許してもらえないフォンは、段々疲れがたまってきていた。
暫く続いたミーファの不満もようやく一通り終わりを告げようとした時、ミーファの背後でイヤラシイ男の声が聞こえた。
「み〜つけた」
その声に背筋が凍るような気持ちになるミーファは恐る恐る振り返る。そこには、先程宿で絡んできた男とその仲間が沢山集まっている。様々な武器を持つ男達は檻の周りを囲み不適に笑い出す。顔を引きつらせるミーファにフォンが小声で聞く。
「何か、嫌な雰囲気だけど、お前この人等に何かしたのか?」
「私は何もしてないわよ。やったのはあなたの知り合いよ」
「それで、何でお前が囲まれてるんだ?」
「そんなの知らないわよ」
男たちは一歩一歩ゆっくりとミーファに近付いていく。
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