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第4話

大学時代から、休日だからといって何かをするタイプではなかった。

思い返してみれば休日はアルバイトしたり、夜はたまに友人と飲みに行ったり、

アウトドアなタイプではない俺は、基本うちでダラダラ過ごしていたな。


だからと言って平日は週3日、2時間しか労働していない。


暇だな。


同級生たちは皆、新卒で新生活、俺どころではないだろう。


ずっとうちでダラダラしていると母さんに何て言われるか分からない。

おまけに土日は父さんもうちにいるし、ということで目的もなく出かけることにした。


まずは書店に向かった。今では読んでいた漫画などは全て電子書籍で買っているけど、やはり書店独自の良さってあると思う。

比較的静かな環境で、本がきれいに陳列されていて、興味があった本のそばにある本にまた興味を持って、そういうのがなんか好きだなって思う。


ふらっと向かったのは料理本のところだ。

不摂生をしてると思われる東雲さんに何か嫌味ではない程度の、栄養がある料理を作ってあげられないだろうか。作り置きをしておいたとして食べてくれるのだろうか。レンジで温めるのさえ面倒がらないだろうか。


そして資格の本のところにも足が向かう。

掃除や片付けみたいな家事全般のスキルって資格はあるのだろうか。

そう考えていると主婦が見るような本の場所にも向かっていて、すでに試し読みしている奥さま方に不思議そうに見られたりして、いい加減退いた方がいいかなって、退散することにした。


次に東雲さんちの洗剤を詰め替えたことを思い出して、ドラッグストアにも行ってみた。買っておいていいか確認しなかったけど、相場だけは確認しておいて損はないと思ったからだ。


このレトルトだったら一人でも作ってくれそうかな。

この冷凍食品だったら常備しておいてもいいんじゃないかな。


あ、俺この綿棒使ってみたいかも。整髪剤もなくなりそうだったっけ。


この保存容器使ったら均一に温めできるかな。

東雲さん、パックご飯ちゃんと食べるなら、ふりかけとかどうかな。


そうこうしていたら休日はあっという間に過ぎてくれた。


仕事、増やしても問題ないかもな。


* * *


月曜の昼食時、母さんが思い出したように言った。

「こないだ豚汁で使った鍋、持って帰ってきて欲しいんだ」

「ごめんね、やっぱり『ない』ってなると必要だなってなるものね」


なるほど。

東雲さんちにも、少しずつ調理器具を揃えていった方がいいのかもしれない。

鍋、買っていいか確認してみようかな。


今日は肉じゃがを作る予定だった。

それと、卵焼き。余裕があればゆで卵も。


卵はなかったはずなので、向かう直前に近所のスーパーへ寄る。

他の材料は、金曜に買った分がまだ残ってるはずだ。


「ピンポーン」


返事はない。


「ピンポーン」


少し間を置いてから、ぱたぱたと足音が近付いてきた。


「はいはーい」


よし、慣れたぞ。

東雲さんはピンポン2回必要なんだ。


「よろしくお願いします」


そう言いながらキッチンへ向かうと、東雲さんが袋を覗き込んできた。


「何か買ってきてるー」

「卵焼きを作ろうと思いまして」

「やったー」

卵焼きでこんなに喜んでくれるんだ。


そうして冷蔵庫を開くと、プリンがちょこんと。


「あ!もしかして甘いの好きなんですか?」

「うん、コンビニ行ったときに全部2個ずつ買ってくるの」


それはどういうことかな?


「そうしたらあまり買いに行かなくていいでしょ」

「なるほど」


要するに出不精なのか。

来るときのついでに買ってきてあげたいけど、それってどうなのか?

それをしてしまうと、この人はますます外に出なくなる気もする。


やはり2週目にもなると、少し段取り良くこなせるようになってきた。

順調、順調。


そして、鍋を忘れた。

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